出版社内容情報
真っ当に生きてきたはずなのに、気づけば人生の袋小路にいる中年男の憤りがコロナ禍の社会で暴発する! 純粋で不器用な魂の彷徨を描く第39回太宰治賞受賞作。
内容説明
マッサージ店で勤務する柳田譲、44歳、独身。傷つきやすく人付き合いが苦手な彼の心を迷惑な客や俗悪な同僚、老いた母や義父が削り取っていく。自分が暴発してしまうまえに自死することだけが希望となった柳田をさらに世界の図らざる悪意が翻弄する―。第39回太宰治賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じゅん
33
ここまで共感できない主人公は久しぶり。コロナ禍の時期における勤務先のマッサージ店と唯一の楽しみ自転車にまつわる物語。自分に自信がないと言いつつプライドが高いネガティブ思考の塊。影響を受けないように気を付けなければ。水を飲めずに死んでいく渇死と比べると、衰弱死する老人は案外苦しくない。人間の体には苦しみが限界に達すると、それを和らげるための脳内麻薬を分泌する仕組みがあるらしく、水さえ飲んでいれば楽に逝ける。ブレサリアン:ブレスだけで生きる人。リキッダリアン:物を食べず水分だけ摂ってる人。ビーガン:完全菜食。2024/11/07
uniemo
26
初読みの作家さん。太宰治賞受賞作ということだから新人の方なのかな。周囲の様々なことに敏感で癖のある考え方で生き難そうな主人公がどんどん破滅に向かっていく様子をとても読みやすい文体で描いています。その内容の割に嫌な気持ちにはならなかったです。自分はそこまで思いつめたことはないけれど少しその考え方も理解できてしまうところが怖いのでメンタル整えなければと思いました。2024/01/27
石橋陽子
24
主人公は世の中の流れに乗る事や世間と正面から向き合う事ができない。優しさを素直に受け止めれず上手く生きれないもどかしさから、誰にも理解されない独自のテーマを持とうとする。苦しみに耐える事、打ち勝つ事が人生の本分だと思う事でなんとか生きている。右へ倣えで不本意な人生を受け入れるより、どうするかは自分で決めたい。分かり合うとか理想であり無理に寄り添う事ない。みんなそんな事を考えて生きているのかと肩の荷が降りる作品だった。みんな他人の事を思いやれる、暗黙の了解の分かる大人だと信じていたけどそうでもないのが世の中2024/08/08
Gemi
23
図書館へ予約した本を取りに行くついでに新刊の並ぶ棚を物色していると、やけに目に付いたこの本。知らない作者、厚みのなさ、太宰治賞…ま、期待薄だけど何故か気になるので借りてみることに。読み始めると…ん、んー…ん?面白いじゃあないか。マッサージ店で働く44歳の柳田譲は世の中にイラついている。そしていつか自分が暴発して家族に迷惑をかけてしまう前に死のうと思っている。正確に言うと死ぬのではなく生きるのをやめようと考えている。この考え方、発想は割と共感できてしまう部分が多々あった。自分もヤバいのか?と考えさせられた。2024/03/02
りょうけん
23
<能> 久しぶりに純文学系の本を手に取る。題名にちょっと惹かれたから。で,なぜかこの手の純文系の本は薄手で それが「ん,読んでみようかなぁ」という衝動にもつながる。薄い本は基本読み易い,と僕は思っている。物理的重量的にはそれは間違いない事であって分厚く重い本は読み出すのに決心がいる。でもまあそれは今回の様な初めて読む作家の本の場合で 贔屓筋の作家の場合は例えいつも分厚い京極本でも面白い事が最初から分かっているので迷わず読むが。 2024/01/29