出版社内容情報
ホラウチリカが紹介されたアルバイトは美術館のヴィーナス像とのラテン語でのお喋りだった!? 英語版も話題の『空芯手帳』の著者が送る奇想溢れる第二長編!
内容説明
算数で「平行」を習ったときから、ひとには見えない黄色いレインコートに身をつつむことになったホラウチリカ。ある日、大学の恩師から紹介された仕事は古代ローマの女神像のおしゃべり相手だった―。誰もがコミュニケーション不全を抱える世界で、有機物と無機物の境界すら越えて、わたしとヴィーナスは手に手を取り合い駆け出していく。新しい関係性の扉をひらく無敵のシスターフッド小説!!
著者等紹介
八木詠美[ヤギエミ]
1988年長野県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2020年、「空芯手帳」で第36回太宰治賞を受賞。同作は現在世界14カ国語で翻訳が進行しており、2022年8月に刊行された英語版は発売まもなく増刷し、ニューヨーク・タイムズの今年の収穫に取り上げられるなど話題となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
302
八木詠美さんの待望の第2作で今回も惚けた奇妙な味わいのファンタジー小説に仕上がっていますね。ヒロインのホラウチリカはラテン語ができた事から博物館の古代ローマの女神ヴィーナス像と週一度のおしゃべり相手になる仕事を引き受けます。普段は冷凍倉庫で働く彼女は最後に思い切った決断をして行動するのですが、それは読んでのお楽しみとしまして、常識外れのエピソードで私が大好きなのはネット予約した美容院に行くと葬儀屋で死者の髪結い女性が手すきの時に生者に仕事をすると言う訳で、リカは髪のスタイルを聞かれ「いつもの」と答えます。2023/05/07
シナモン
123
開館日には様々な人の視線を浴びるように受けるヴィーナス像。そのストレスたるやいかばかりか。そんな彼女の話し相手というアルバイトを週に一度の月曜休館日にすることになったホラウチリカ。そのホラウチは黄色いレインコートを常に身にまとっていて…。なんだか訳のわからない設定が面白い。二人の会話にクスッとさせられたり、ハッと考えさせられたり。不思議で奇妙な物語だけど、こういう世界観好きだなー。2023/07/13
fwhd8325
101
デビュー作「空芯手帳」と言い、この作品と言い、独特の世界観を描いています。私のキャパシティでは処理しきれず、頭の中を突き抜けて行くようです。しかし、この物語も楽しい。空想ではなくそこにあるだろうと思わせてしまう力のようなものを感じます。2023/04/23
どんぐり
89
偽装妊娠の『空芯手帳』に次ぐ著者の2作目。昼間は冷凍倉庫で派遣の仕事をし、博物館の休館日に彫刻のヴィーナスと話すアルバイトを紹介された女性。ヴィーナスに話す言葉が大学で学んだラテン語という奇妙奇天烈な設定だ。人間よりも彫刻を愛する学芸員のハシバミさん、賃貸アパートで「そでした」「がっこでした」など“う”抜きで話す大家さんのセリコさんなどが登場し、コミュ障女子が対象と向き合うヘンにねじれた関係が異次元の世界へ連れて行ってくれる。これは一回読んでもわからない、ぶっ飛んだ小説だ。2023/11/07
ネギっ子gen
82
【私は解放されたかった。誰かを求めることから、私であることから】大学の恩師から紹介された仕事は、古代ローマの女神像のおしゃべり相手だった――。主人公ホーラことホラウチリカの職場は博物館で、シフトは週1回、経験不問、但し日常会話レベルのラテン語必須。仕事内容は古代ローマのヴィーナス像の話し相手。高校生の頃に読み耽ったカフカや安部公房を思い起こさせ、シスターフッドが上手くいく結末のため清々しく読み終えられた。<あなたは自分が傷つくことはしないのよ。そうやって他の人を、自分のことだって、ただ遠ざけてきたの>。⇒2023/05/18