出版社内容情報
かつて女装をしていた34歳の竹村は、16歳の「美少女」ユヅキと出会い、その理想の女装像に惹かれていく。クィアな欲望のリアルを描いた現代文学の最前線!
内容説明
世間の規範やマッチョイズムに抗して、セクシュアリティのエッジを拡張する気鋭の作家が活写する、クィアな欲望とともに生きのびていくためのわたしたちのかたち。おれはきみになりたかったんだ。かつて女装をしていた34歳の竹村は、16歳の“美少女”ユヅキと出会う。竹村はユヅキを通して自身の理想の女装像を追い求めようとするが―。
著者等紹介
坂上秋成[サカガミシュウセイ]
1984年生。早稲田大学法学部卒。小説家。主な著作に『惜日のアリス』『夜を聴く者』(河出書房新社)、『モノクロの君に恋をする』(新潮文庫nex)、『ビューティフル・ソウル』(講談社ラノベ文庫)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
34
かつて女装をしていた34歳の竹村がたまたま見つけた、16歳の「美少女」ユヅキ。その出会いから理想の女装像に惹かれ、複雑な想いや葛藤を描いてゆく物語。似たような嗜好の存在を見つけてそれが気になって仕方ない竹村。そこから始まった関係で感じる忘れていた思い、けれど今はもう自分は止めて仕事や家庭もあり、同じようにはなれない現実。かつての自分を知る人の変わった部分や変わらない部分に安堵し、自らにないユヅキの若さに対する複雑な想いを抱えて、けれどそんな自らの想いを認め折り合いをつけてゆく竹村の姿がとても印象的でした。2020/08/17
みのくま
8
本書はセクシズムとルッキズムとエイジズムの交差点にあるような作品であり、読後感は33歳の現在のぼくと16歳の過去のぼくの双方ともがボロボロに殴られたような印象を受けた。33歳のぼくは不可逆的な老いに直面させられた事によって。16歳のぼくは「ぶさいく」な自分に直面させられた事によって。本来ぼくは本作で重要事だとされている価値観には全て興味がない。服装も容姿の美醜も年齢もどうでもいいと思える人間なのだが、ぼく個人がそれでよくても周縁から雑音が聴こえていた事は何度もあった。なんでこんな事で馬鹿にされるのだろう。2020/12/29
バーニング
2
2024年開催のおかやま文芸小学校で購入した一冊。お店の女性が坂上秋成好きで、話が弾んでそこで購入した記憶がある。あの時の彼女がこの小説のどういうところをおもしろいと思ったのかを聞いてみたくなった。内容としてはデビュー作『惜日のアリス』を思い出すほど、バーを訪れる描写が多い。そこは優しい時間になる時もあれば、優しくない時間が訪れる時もある。この小説自体もそうで、優しさが根底にあるけれど、現実もちゃんと書く。そういう小説だと思ったし、その地に足ついている感じは坂上さんらしいと思った。2025/05/02
AKAWAKA
1
もう絶対そこには戻れないし、彼女にはなれないし、羨ましいし、妬ましいような気持ちすらある。そんな気持ちと、蓋をしていた気持ちに向き合ってるお話。でも、私もかなり人に恵まれてる。みんな、あたたか。“私“の人生、楽しそうに見える。何よりも34歳という年齢はこんなにも若くないことに驚く。2022/08/05
まさひろ
0
おもしろい。他の作品も読みたくなった。2022/01/31