出版社内容情報
芥川賞受賞から晩年までつけていた「偶然日記」を初公開。著者が深い関心を抱き続けていた「偶然」と「夢」に対する興味と考察が詰まった1冊。
内容説明
赤瀬川原平の偶然日記。ケタはずれの表現者の死後、発見された日記には、三十数年の偶然と夢の記録。赤瀬川ワールドの源泉、ここにあり!
目次
序章 写真と偶然
1章 偶然日記(偶然日記1977~2010)
2章 偶然小説(舞踏神;珍獣を見た人)
終章 偶然の海に浮く反偶然の固まり
著者等紹介
赤瀬川原平[アカセガワゲンペイ]
1937年、横浜市生まれ。武蔵野美術学校中退。60年代は、ネオ・ダダ、ハイレッド・センターに参加、前衛芸術家として活躍。67年、模型千円札作品で有罪判決。70年代は、『櫻画報』などパロディ・漫画作品を発表。81年、尾辻克彦名で書いた「父が消えた」で芥川賞受賞。86年、路上観察学会創立に参加。その後、ライカ同盟、日本美術応援団など多彩な活動を展開。89年、『老人力』がベストセラーになる。2014年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
32
思えばそれこそこの本の出だしで赤瀬川原平自身が書くように、あらゆるものごとは「偶然」によって出くわすものだろう。「夢」と「偶然」という2つのキーワードを基に記されるこの断片的な記述は、いま一度この世界の持つそんな危うさをあぶり出す(何せ、こんなにも至るところにファニーな「偶然」や「夢」の端緒はあふれているのだ)。だが、読み返して思うのは赤瀬川原平の筆致がオカルト的な臭みを感じさせることなく、あくまで平静さ・冷徹さを保ったまま事態をまっさらな感受性で眺めて受け容れようとしているそのオープンな姿勢の凄味である2024/02/04
踊る猫
24
「反偶然」というパワーワードが目を惹く(赤瀬川のオリジナルの概念ではないが、しかしこのような言葉とめぐり会うのもまた偶然を呼び寄せる才能の賜物だろう)。それは「偶然」をなんら神秘的なものとして過度に美化することなく、ただスプーン曲げのようにありうることとして受容する姿勢だろう。いわば世界に開かれた態度。この本の中ではファニーな偶然や夢日記が開陳される(たまたま人と会った、程度のものもあるが)。世界に開かれた、世界をまるっと肯定する姿勢に支えられたそれらの記述はとても見通しがいい。私も愛すべき偶然を求めたい2022/01/26
ほじゅどー
15
★★★★この世の中は偶然に満ちている。都市はできるだけ偶然を排除し、自然を排除している。でも町は永遠でなく、老化してゆるんだ所から、追い出された偶然、自然がじわじわと進入してくる。カメラを手に歩いていると一番面白いのはそこだ。人間はふだん町の必要なところしか見ていない。でもカメラと歩くと人は現代人から狩猟採集民に遡る。必要でもないところに目が行き、思いがけないものを見つける。想定外のものが新鮮に映るのだから、不思議なものだ。2016/07/31
阿部義彦
14
赤瀬川原平さんの死後丁度1年目が発行日となってます。死後に奥様の尚子さんがみかん箱に入っていた手帳の束を発見して、偶然日記なるものを紐解くとそこには、何気ない日々の出来事と偶に丸で囲んだ記号とともに偶然の出会いや出来事が記録されてました。それ等を松田哲夫さんが編集して南伸坊さんが装丁して、老人力をだした縁の筑摩書房から出版されるなんて、あの世の赤瀬川さんも喜んでらっしゃると思います。赤瀬川さん自身が自らの大回顧展を目前にしてお亡くなりになった事、亡くなる二日前につげさんから電話があったなんて!因縁かな?2015/11/06
ぐるぐる244
8
図書館 「ものごとはすべて偏ることを常態としており、まんべんなく散らばるのはむしろ特異なことだ。」「それがある一時期に重なる第二の偶然は何か、それを偏らせる何らかの未知の力が働いているのだろうか、と不気味的に考えるところから、ほんのりと神秘思想への接近が始まる。しかしそれは人間の秩序志向がもたらすものらしいのである。」2016/05/28
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