出版社内容情報
太宰治、吉川英治、ケストナー、ドイル、アンデルセン……。あの話この話が鮮やかに変身するパスティーシュ小説集。思わずにやりとする、文芸の醍醐味がたっぷり!
内容説明
大人のお茶会へ、ようこそ。あなた、どこかへ辿りつけるでしょうか。騙されたと思ってひと口、飲んでみてください。美味しいです。心地よく酔います。楽しいです。そして、ちょっと怖いです。魅惑のパスティーシュ小説集。
著者等紹介
中島京子[ナカジマキョウコ]
1964年生まれ。作家。2003年、田山花袋『蒲団』を下敷きにした書き下ろし小説『FUTON』でデビュー、野間文芸新人賞候補になる。以後、『イトウの恋』『均ちゃんの失踪』『冠・婚・葬・祭』で吉川英治文学新人賞の候補になるなど、活躍。2010年、『小さいおうち』で直木賞を受賞し、2014年、山田洋次監督により映画化される。同年、『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
327
「模倣だったりパロディだったり珍解釈だったりする」パスティーシュ短篇が16篇。元版は太宰や漱石、鷗外からアンデルセン、ベケットにいたるまで、これまた様々。ただし、副題にあるアリスは登場しない。原話の趣きを一番残していたのは「夢一夜」(もちろん「夢十夜」のパロディ)か。いずれの作品も、書いている作家本人は大いに楽しんだ様子。ただ、読者の側としてはそこまで楽しめるかは、やや疑問である。作家仲間の間ではウケるかも知れない。私が面白いと思ったのは、先の「夢一夜」と「国際動物作家会議」くらいか。2024/05/22
めろんラブ
94
こちら、パスティーシュ小説集とな。で、パスティーシュとは「作風の模倣」とな。つまり、「既存の作品を私色になぞらえてみた」という感じ。中島さんはこれ系の作品を何作か手掛けているので(しかも、本家越えの面白さだったりして)、もうお手のもの。余裕しゃくしゃく、鼻歌まじりで書いたのではなかろうかと思うほどの軽やかさ。批評性の強く出たものが何作か見受けられましたが、皮肉や批判がユーモアのオブラートに包まれているので居心地が良く、中島カラーの上質な世界を堪能しました。洒落のきいた粋な読書を楽しみたい方などにおすすめ。2015/05/06
がらくたどん
63
先日、こちらでご紹介頂いて中島京子さんの新しい短編集を読んだ。「結婚」をテーマにトーンの異なる掌編が編まれていて楽しかった。「あ、もう一つ短編集読んだな」と思い出したのがこちら。16篇のトリビュート掌編。小説風・エッセイ風・戯曲風と賑やか。「本歌」にあたる作品も和洋取り混ぜ小説・童話・昔話・戯曲ととりどりで楽しい。「ゴドーを待たっしゃれ」が最高!坪内逍遥のシェイクスピアは青空文庫で読める「ロミオとヂュリエット」しか読んでいないが、かなり相当面白い逍遥文体を見事に写した力作と思う。巻末の解題風メモも楽しい。2022/08/08
いたろう
62
鴎外、漱石、芥川、アンデルセン・・・、既存の作品を使ったパスティーシュによるパッチワーク。そこにあるのは、模倣にとどまらず、本歌取り、パロディ、再構築、オマージュ、etc。元の作品を読んでいないため、その面白味を十分理解できないものもあるものの、倉橋由美子のようにシュールだったり、筒井康隆のようにナンセンスだったり、その料理方法がまた一級のパスティーシュ。2015/01/24
shizuka
60
世界の名著に因んだオマージュ的創作短編小説集。あの話に中島スパイスが加わるとこんな話に!が面白かった。元ネタを知らないのも多かったがそれはそれで「初めて出合う物語」としてじっくり拝読。一番気に入ったのは『国際動物作家会議』、手違いで間違った会議に参加することになったけれど、なんかしっくりきちゃって帰りたくないなーと思うところ。かわいい。あとは『青海流水泳教室』。水が足りなくなった近未来、プールは贅沢。よって羽毛のプールで古式水泳術を復活させた小初の父。形式に重きを置き古の海に思いを馳せる。ロマン見つけた。2017/12/22