内容説明
書き下ろし12篇を含む珠玉の15篇。静かに激しく紡ぐ七年ぶりの最新詩集。
目次
木は旅が好き
鶴
あのひとの棲む国
鄙ぶりの唄
疎開児童も
お休みどころ
店の名
時代おくれ
倚りかからず
笑う能力
ピカソのぎょろ目
苦しみの日々哀しみの日々
マザー・テレサの瞳
水の星
ある一行
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
363
詩人は常に孤高でなければならないのだろう。表題作「倚りかからず」はまさにそうだ。そして、孤独であることに誇りを伴っている。詩人の眼は、また限りなく優しい。そして郷愁を運んでくる。詩人の心は時に空間を、あるいは時間を遥かに超えてゆく(「木は旅が好き」、「鶴」)。また、ある時には詩人の着想は突飛だ。ピカソのぎょろ目がバセドウ病だなんて。詩人は人の生き方に崇高なものを見つめる(「マザー・テレサの瞳」)。そして、詩人の眼はいつも驚きに見開かれている(「水の星」)。様々な意味において、ほんとうにいい詩集だ。2013/09/13
masa@レビューお休み中
106
あぁ、単行本で読むとまた質感がちがいますね。文庫よりも、気持ち固くて、ストイックな印象を受けます。それとも、時間が経ったことによって僕の受け取り方が変わったのかな。詩集の良いところは、そういう刹那を読み取れるところなのかもしれないですね。詩人と対話とする、己と対話をする。そうやって、何かを見つけたり、何かを感じたり…。下手な自己啓発本を読むよりも、よっぽど気づきがあるような気がします。結局は答えって他人からではなく、自分で見つけるしかないんですよね。だからこそ、直球な言葉が僕は好きです。2017/04/26
ベイマックス
95
ほとんど手にしない詩集。発売時に話題になった記憶があり図書館で見掛けたので読んでみました。◎俳句とか文字数に縛りがある作品はすごいなぁ~と漠然と感じるが、詩って、誰でも書けるんじゃないかな~と思ってしまう。感情を箇条書きにしていったら詩に。でも、どこか違うんだろうな。言葉の選び方・リズム・音読した時の音などが。そして、小説と一緒で読み手の心を魅了する一文に出会えれば嬉しい。表題の詩、『寄りかからず』は、思考の断捨離みたいな感じなのかな。2021/10/22
どんぐり
81
薄っぺらな人生を歩んでいると、つい何かに倚りかかりたくなる。そしてますますへなちょこな人間になっていく。茨木さん晩年の詩は、そんな自分に活を入れてくれる。なかでも表題作の《倚りかからず》と宇宙の漆黒の闇のなかをひっそりまわる《水の星》の2篇がいい。できあいの思想や宗教、学問、いかなる権威にも倚りかかりたくはないという詩人のことばに、凛とした人の姿を重ねて読んだ。2019/01/27
榊原 香織
68
”便利なものはたいてい不快な副作用をともなう”ー「時代おくれ」 分かりやすい簡潔な言葉でするどい詩2022/06/17