感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みずあめ。
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『黄昏篇』。黄昏は昼と夜の間の曖昧な時間帯、人の顔の判別ができなくなりつつある時間帯であって、この短編では、それを物語内の主となる時間帯のみならず、描写においてなによりもそれが表現されているように思う。「幕間」の役割が、最後の『月物語』では、物語の進む過去・完了時制を中断する現在時制、つまり作者が今、まさに物語を書いている時制の文によって担われている。他にも、太陽・月・バター・チーズ・しびんの中身など、「黄色」を発する形象群を配置していくなど、色々読むべきところがある。個々の結末も意外で面白かった。2012/07/07