ちくまプリマー新書
ある漂流者のはなし

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  • サイズ 新書判/ページ数 174p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480687142
  • NDC分類 916
  • Cコード C0295

内容説明

「生きる力」って何だろう。三十七日間、ひとりぼっちで漂流し奇跡的に生還した男は、何を考え、どのようにふるまったのか。その真実に迫る感動のドキュメント。

目次

1 漂流した男の気持ち
2 炭鉱の島で育って
3 エンジンが動かない
4 食料も水もない
5 炎暑と海水と歌謡曲
6 荒れる海の記憶と現実
7 夢と死、あるいは生存

著者等紹介

吉岡忍[ヨシオカシノブ]
ノンフィクション作家。1948年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中から執筆活動を開始。教育やテクノロジーの現場を歩く一方、アメリカや東南アジアなどにも精力的に足を運び、取材活動を続けている。1987年、日航機墜落事故を描いた『墜落の夏』(新潮文庫)で講談社ノンフィクション賞を受賞。その綿密な取材力と豊かな表現力には定評がある
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こばまり

57
この漂流者にしてこの表現者あり。予想を大きく裏切られる読み物だった。奇跡の生還でありながら強く印象に残ったのは滅んでいくものとしての存在である。それは漂流者が炭鉱町で生まれ育ったことにも起因する。漂流者表現者双方に冷徹な観察者の一面がある。2020/07/19

nbhd

21
やわらかい新書ではあるが、これが思いのほか感動的な一冊だった。長崎平成漁師漂流譚。マスコミは基本的に5W1H&時系列で漂流の事実を認識したがるものだが、時間や空間を測るすべを持たない漂流者はある種の超越した時空間を生きている。さらに結局は救助され、生存確認をされるわけだが「もしかしたら、おれはいま死んでいるのかなって。ほんとは死んでいるのに、おれが気がついていないだけなのかな」と漂流者の生死の認識も陸の人のそれとは異なる。面白話にも感動話にもおとしこまない書き手と漂流者の距離感がちょうどいい。2015/04/01

kakoboo

17
場所を知りたければグーグルマップ、乗り換えを調べたければ路線検索、、、と何でも調べればわかる世の中。何かしようとしてもある程度すぐに方法が見えてしまうことが多い今日だからこそ読むべき本だと思います。武智さんの気持ちは恐らく誰もわからないと思います。それをマスコミや知りたがる人が根掘り葉掘り聞いてブームのように嵐のように去っていくのは遣る瀬無さしかないです。日々色々なことを決めて、昔決めたことが変わってそれでも前に向いて進んでいく。それでいいんだと思います。生きるということについて強く感じるものがありました2018/01/15

安南

16
軽く読める新書だが、強い印象を受けた。一人っきりの漂流。だからこそなのか時間の流れは曖昧になり、生と死さえも曖昧に…。迷いに囚われたくなくてその元となる水なり食料なりを処分してしまう。極限状況に置かれながらも、驚くのはその執着心の希薄さ。それは武智さんならではの感性なのだろうか。あまりにも自然すぎて不思議。まるで悟りきった僧侶のよう…補陀落渡海を想起する。稀有な人柄に興味が尽きない。漂流していた時に聴いていた山川豊の歌を、陸ではどんな気持ちで聴くのだろうか。2015/04/18

みなみ

11
2001年に漂流した長崎・崎戸島の漁師の武智三繁さんの聞き取りをもとにしたドキュメント。武智さんの生い立ちから漂流するまで、漂流後のようすを描く。雨もろくに降らなかった中で台風に遭遇しながらも生き延びた武智さんの記録は壮絶だ。マスコミに追われ時の人になってしまった武智さんは体調をこわして入院するのたが、その境遇でよく取材を引き受けてくれたものだと思う。武智さんの心の奥底まで引き出すような記録で、すごいとしか表現ができない……2023/10/01

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