出版社内容情報
社会学の奥深さがわかる
「私」はもっと他でもありえるのかもしれない。
「私」はこんなにも社会とつながっているのか――
自分と世界の見え方が変わる!
なぜ「私」は、今のような「私」であるのだろうか?
他者との関係性からより広い社会的状況までに影響を受け、「私」という存在は複雑にかたちづくられている。
社会学のさまざまな観点からその成り立ちについて考え、「私」と社会をめぐる風通しをよくする手がかりを示す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
10
自己論というか個人と社会との関係を題材にして統計などの数値データの扱い方、関連の理論や研究の紹介を進めて行く。話の進め方に昔教職で受けた社会学概説の授業を思い出した。読者対象は学生ということだが、「自己責任」や「自己分析」に関する議論など、著者の年代も相まって我々氷河期世代にも刺さりそうな本。2025/04/26
ぷほは
9
社会学でアイデンティティ論や自己論について述べる上での拡がりを、最新の動向までカバーしながら書いていて、非常に助かる。エリクソンやミード、ゴフマンやギデンズなどは分かっていても、フーコーやハッキング、ローズやトゥアンなどの議論を「自己」や「個人」の議論として位置づけていくというのは、抽象的だったり歴史から現代までの知識が幅広く要求されるので、系統立てて分類し語るのが難しい。本書は個別事例の研究にも言及しながらそうした困難な作業をきっちりやり通しており、初学者にどう説明すればよいかを丁寧に示してくれている。2025/04/20
ソーシャ
5
社会学における「自己」を巡る議論を古典的な議論から、現代的自己を巡る議論まで、具体的な研究の例として日本における調査結果も交えつつ紹介した一冊。フーコーの方法論についての紹介は力が入っています。ギデンズらの自己の再帰性についての議論と、心理療法の立ち位置についての議論を興味深く読みました。プリマー新書ですが結構議論のレベルが高く、歯ごたえがある一冊です。2025/04/29
totuboy
4
自己啓発本が「自分が変われば周りも変わっていく」というスタンスだが、視点を変えて周りの環境や社会そのものが変わっていかなければいけないのではないか、という主張。2025/04/20
KW
1
「内面を技術的操作の対象とする」語りを多くの人がするようになった。という話が非常に印象的。社会というコントロール出来ないものを遠ざけ、見ないことにして、自己を啓発することで、自分や環境を洋服のように変えていく風潮→自己責任論につながる。 また時代において感情は失われるものというのも面白い。武士道などもそうなのかなと。抽象概念ために今の自分は死ねない。かと思いきや、心身に不調が来るくらい働いてしまった自分も同じか。 武士の時代はむしろ感情を一気に高ぶらせて人を殺せないといけなかった。一喜一憂の幅の違い。2025/04/29