出版社内容情報
聖書に登場する呪われた人、迫害された人を、美術はどのように描いてきたか。2000年に及ぶ歴史の中で培われてきた人種差別のイメージを考える。
内容説明
聖書のエピソードに登場する人物を西洋美術はどう描いてきただろう。二〇〇〇年にわたるその歴史の中で培われてきた人種差別のイメージを考える。
目次
第1章 呪われた息子―ハムとその運命(ノアの泥酔と呪われた息子ハム;祝福と呪い;褐色肌のハムの子孫とアフリカ ほか)
第2章 ハガルとイシュマエル―追放された母子(エジプトの女奴隷ハガル;ムスリムとしてのイシュマエル;イスラム教におけるアブラハム父子 ほか)
第3章 賢者と聖人―キリスト教とレイシズムの諸相(シバの女王―「わたしは黒くて美しい」;黒いシバの女王;白く描かれたアフリカの女王たち ほか)
著者等紹介
岡田温司[オカダアツシ]
1954年広島県生まれ。1978年京都大学文学部卒業、1985年同大学大学院博士課程修了、岡山大学助教授を経て、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。現在、京都大学名誉教授。京都精華大学大学院特任教授。西洋美術史・思想史専攻。『モランディとその時代』(人文書院)で吉田秀和賞。『フロイトのイタリア』(平凡社)で読売文学賞受賞。著作多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
79
他館図書館本。 ハリウッド映画のアジア人、アラブ人の描かれ方の歴史の本を読んだことがあるのですが、この本もどちらかというとソッチ系の本。本当に西洋人って有色人種やらアラブ人やらユダヤ人を描くのがすきなのですね(軽蔑)。キング牧師のアブラハム批判(二日酔い)はナイスな一言。2023/04/02
ネギっ子gen
33
聖書に登場する呪われた人や迫害された人を、西洋美術はどう描いてきたか――。歴史の中で培われてきた人種差別のイメージを、キリスト教美術から読み解いた書。「おわりに」で、<曲りなりにも半世紀近く西洋美術に関心を持ってきて、ずっと気にかかってきたのが、その根幹をなすキリスト教美術のいわば負の側面である。これに蓋をしたり無視をしたりすることはできないのではないか。小著はそんな思いから生まれた。話の中心は、キリスト教のテーマにまつわる黒人やイスラムの表象にあるが、必要ならば、ユダヤ人やジプシーにも言及した>と。⇒2021/04/01
Nobuko Hashimoto
33
本屋さんでの出会い。レイシズムの根はキリスト教とその図像のなかで培われていたことを具体的な作品を通して明らかにする。ノアの息子たちの逸話を援用(後付け解釈?)してアフリカ人を奴隷にする根拠とするなど、聖書そのものには書かれていない意味付けが付加されたり、時代によって聖書の記述の解釈が変わったりして、それが図像に反映されていく。それらの表現は既定路線となって、人びとの「記憶」となり、「人種」観を形成していく。例に挙げられた絵はオールカラーの図版付きで大変わかりやすい。図版が小さいのが残念だが仕方ないですね。2021/01/27
ぱなま(さなぎ)
24
西洋美術が主にヨーロッパの強国においてキリスト教の布教や称揚のために用いられてきた中で、マイノリティあるいは侵略の対象であった民族(ユダヤ人、イスラム、黒人など)がどのように描かれてきたかを多数の例から示す。描き手に蔑視や貶めす意図があったというよりは、社会の中に巣食っていた人びとの感覚が絵画や彫刻といった表象の中に形を取ったということだろう。だからこそ表現者は努めて弱者の立場に寄り添うよう意識しなければ、偏見を意図せず露呈して作品の精神性や普遍性を損なってしまうのではないかと思った。2021/02/10
大先生
13
美術に関する知識がほとんどない私には、【プリマー新書なのに、固有名詞が多すぎて、あまり入門っぽくないのでは?】と感じました(汗)。①方舟で有名なノアと3人の息子、②アブラハムとハガル・イシュマエル、③シバの女王や東方三博士などが描かれた絵画を例にして【キリスト教美術は、聖書のエピソードをレイシズム的に読んで絵画にしてきた。現代のレイシズムも、その根は宗教的なものにある。】という主張自体は分かりやすいんですが…。【先行研究で触れられていないから本書で強調しておきたい】というのも入門書にそぐわないと思います。2022/02/01