出版社内容情報
私は理解されるまでに1000年の時を待つ――江戸の鬼才が遺したこの言葉が秘める謎に、最新の研究と迫力のカラー図版で迫る、妖しくも美しい美術案内。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
53
若い頃その画家に魅せられ、以後六十年余を江戸時代以来埋もれた伊藤若冲を現代に蘇らせることに傾注した著者による、生涯、主作品、作品誕生秘話等々を網羅した画家の紹介本。新書版ではあるが、若冲作品の主なもの六十点余りがカラー図版で掲載され、作品の微細な部分にまで踏み込む解説で、その魅力を大いに語る。また、信仰と画業に生きた人若冲、という定式化された見方に対して、町人としての若冲の事蹟に一章を割き、現代の心理学的知見から見る若冲など、様々な視点から若冲の人となりに迫っている。機会を見つけて是非本物を見たいものだ。2022/08/30
ホークス
43
2020年刊。若冲研究の第一人者による、新書なのにかなり詳しい入門書。カラー図版多数。私は40才過ぎて絵を観はじめたけど、若冲には本当に驚いた。超絶技巧、稠密さ、鮮やかさだけでなく、様々な遊びが尖っている。生物を正確無比に描きながら、無生物にも生的な揺らぎを与える。江戸時代とは思えない点描やドット絵。鶏に代表される自在で幻惑する動き。著者が指摘するのは「一貫した奇妙さ」。それは飛び抜けた好奇心を示す。鳳凰の優美な羽に描かれた原色のハートマーク。図鑑みたいな蛸にくっつく可愛いミニ蛸。観るたびに楽しい。2021/07/26
瀧ながれ
33
今でこそ人気が高く、美術館に人が列をなす若冲だが、数十年ほど前には、知る人ぞ知るというくらいの存在感だった記憶がある。若冲というと辻惟雄の「奇想の系譜」が連想され、わたしの中で辻氏は、若冲を蘇らせた人、くらいの信頼を寄せているのだ。こっそりと、若冲の描く水とか雪とかなんか粘っこくない?と思ってたけど言えなかったけど、辻氏が書いたので言ってもいいのだ、粘っこいよねえ、やっぱり! 若冲の生涯や生活から、彼の絵画への影響をやさしく深く解説。作品はカラーで紹介され、読み始めたら止まらないおもしろさです。2020/11/13
Tadashi_N
21
暮らすための絵を描かずに済んだ、技術も資金もある自由な絵描き。2020/11/18
白隠禅師ファン
13
若冲絵画研究の第一人者が、伊藤若冲の絵画と生涯について書いた本。青物問屋としての若冲の一面もよくわかったし、単なる絵画オタクではないことがわかったのは良かった。あと『樹花鳥獣図屏風』は、工房制作として作られたというのも驚きでした。若冲70代の頃の作品らしい2025/03/10