出版社内容情報
日本の歩みは、いつの時代も中国の圧倒的な影響下にあった。両国の長く複雑な関係性を一望することで、歴史の本当のありようを浮き彫りにする。はじめての通史!
内容説明
私たちは何者なのか―。日本の歩みは、いつの時代も世界的大国・中国の圧倒的な影響下にあった。両国の長きにわたる複雑な関係性を通して見ることで、歴史の本当のありようが浮かび上がる。国家の誕生から東アジアの覇権を争った近現代まで、一気に駆け抜け、やさしく愉快に説き明かす。
目次
第1章 国家の誕生(中国文明とは何か;中国古代統一国家の成立 ほか)
第2章 唐風と宋風―平安時代・鎌倉時代(遣唐使時代の終わりとその後の東アジア;唐風と国風 ほか)
第3章 朝貢から進攻へ―室町・織豊時代(朝貢冊封体制の理念;明の登場と朝貢外交の復活 ほか)
第4章 狭い窓口、深い関心―江戸時代(武家政権とその長の名称のこと;海禁の時代へ ほか)
第5章 あこがれから軽蔑へ―近現代(近世東アジア海域の三つの類型;教育勅語の思想背景 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
33
近世の東アジア海域は「ひらかれた海」(一二五〇~一三五〇年)、「せめぎあう海」(一五〇〇~一六〇〇年)、「すみわける海」(一七〇〇~一八〇〇年)の三つの類型に分類できる/この観点で三年連続の大河ドラマとかできないものか。2020/03/26
崩紫サロメ
21
中国思想史を専門とする著者が社会人講座として行った講義を書籍化したもの。日中関係のバックグラウンドとなる儒教思想や朝貢・冊封体制など基本的な説明をし日本人の中国に対する感情が「憧れ→ライバル→軽蔑」へと変わっていく過程を辿る。興味深いのが、禅僧たちがもたらした室町時代の五山文化を日本の伝統文化の基盤と捉えている点。そして、それが近代ナショナリズムにより葬られていく過程などを考えると、「すべての歴史は現代史」というクローチェの言葉が脳裏を過った。2020/07/23
かんがく
19
タイトルにあるように、対象としている読者は高校生程度であるが、大人にも是非読んでほしい本。近年、歴史学で注目されている日中関係史について、かなりわかりやすく概説している。古代から日本がいかに中国の影響を受けてきたかということを、教科書記述の変化に触れながら書いてあり、遣唐使派遣停止で関係が途絶したという俗説を否定。室町期の北山文化と東山文化を、中国禅宗の影響が強い五山文化と総称。近代以降の記述なども、日中や朝鮮琉球などあらゆるところへの配慮が見られる。日本史を語る上で中国を無視できないことを再確認した。2020/04/08
nagoyan
13
優。新旧の山川の教科書を引きながら、通説を批判していく。「子どもたちに語る」とあるが、高校生ぐらいを意識している(当然か)。「唐風」に対置して「宋風」を置き。「宋風」≒「五山文化」こそが、現代まで続く日本社会に大きな影響を与えていると説く。日本史の画期を室町時代に置く湖南を評価。日中二千年のつかずはなれずの距離感。こども向けというのは「勿体ない」。いい大人にこそ、読まれるべきだろう。2020/04/11
ほうすう
12
書名の通り語り口調で紡がれる日中関係史。特に前近代についての記述が多い。対象年齢的には高校生あたりを想定しているようだが、それならこの書名はふさわしくないというか高校生が手に取るかなあとは疑問に思う。内容は日本がいかに中国から多大な影響を受けているかということを分かりやすく解説した良書。特に宋の五山文化の影響がいかに大きいかということや欧州の生み出したナショナリズムという虚構が限界などの説は興味深い。近代の記述も日本人の中国観がいかに変遷しねじれていったのかということを端的に解説しており一読の価値はある。2020/04/30