出版社内容情報
劉備、孔明率いる蜀が中心に語られる三国志。しかし、時代に多大な影響を与えたのは、彼らではなく曹操だ。彼を中心に読みとけば、新たな歴史の一面が見えてくる。
内容説明
三国志のなかでも人気があるのは、劉備、孔明率いる蜀であることは間違いない。しかし、歴史をつぶさにみていくと、後の時代に多大な影響を与えたのは、彼らではなく、魏の曹操なのだ。曹操はどのようにして時代を切り開いていったのか。新たな三国志の一面に光をあてる。
目次
第1章 志を立てる(乱世の姦雄;漢の衰退;志のために;三つの基盤)
第2章 天下分け目の戦い(白馬の戦い;官渡の戦い;華北統一;赤壁前夜)
第3章 三国鼎立(赤壁の戦い;涼州支配;遼来遼来;鶏助)
第4章 古典中国への挑戦(漢帝国と儒教;荀〓の死;魏王;高陵)
著者等紹介
渡邉義浩[ワタナベヨシヒロ]
1962年、東京生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了。文学博士。大東文化大学文学部教授を経て、早稲田大学理事・文学学術院教授。大隈記念早稲田佐賀学園理事長も務める。専門は「古典中国」。三国志学会事務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コウメ
70
入門レベルじゃないぞ!(笑)よくある三国志演技の劉備が主人公じゃなくて陳寿が書いた三国志をもとにした内容。主人公は曹操!!文学者としてや戦略家、政治家として様々の視点で曹操を描いている。赤壁の戦いの戦いについてや「天下三分の計」について書かれている。孔明が考えた「天下三分の計」が有名だけど魯粛も同じこと考えてたんだね。変革者曹操!!!資料もしっかりしていて納得のいく1冊だけど入門じゃないのが難点!2020/02/09
梶
32
『三国志演義』では悪役として据えられる曹操の先見性と革新性を、『三国志』から読み解いてゆく入門書。とはいえある程度の知識が要求されるものの、日本で大きく受容された『演義』が脚色し作り替えているところを非常に明瞭に示してある。易姓革命や中国における儒教の位置など、論点も多彩で興味深い。文学が儒教に代わりうる価値として曹操に認められたことが、現代における文学の普及に繋がっているというのは目から鱗。現在的な視点にも繋がる知見が得られる。2024/07/22
なかりょう
14
三国志について知りたいという娘のリクエストで図書館から借りて来た一冊。私自身、横山さんの漫画と三国無双くらいしか経験しておりませんが、パラパラと捲るうちに一気に最後まで読み終わりました。演義の影響でどうしても蜀漢中心の見方に染まってしまいますが、本書では曹操に焦点を当て革新的かつ現実主義的な人物像を浮かび上がらせてくれます。儒教との関わりや隋唐帝国への影響など目から鱗の内容も多く、大変勉強になりました。2025/05/03
崩紫サロメ
14
曹操の生涯を通した三国志の入門書であると同時に、同士の唱える「古典中国」への理解を深めるための良き入門書となっている。儒教を軸とする「古典中国」については同氏の中公新書『漢帝国』に詳しいが、本書ではその内容を中高生向けにかいつまんで説明されているので、大人であってもこちらから読めばわかりやすいかもしれない。古典中国への挑戦者であり、変革者である、というスケールで捉えられた曹操は非常に魅力的である。三国志のみならず、儒教のあり方に関心のある人にも読んで欲しいところ。2019/12/12
鐵太郎
14
三国志演義の末裔である「いわゆる三国志」でわかったつもりになっている「三国志ファン」にはお気の毒ですが、この本は中高生を対象にしたとなってはいるものの、非常にまっとうに面白い視点であの時代を解説したものです。曹操という時代の変革者への過度の肩入れというところはあるにしても、正史・三国志やまっとうな史料をもとにしたこの時代の解説は、非常に説得力があります。天下三分の計を諸葛亮は方便として使えず、真にその計を持って政情を変えたのは最初に唱えた魯粛であったという話など、うなずけるところが多い。2019/11/11