出版社内容情報
哲学者ポパーの信頼できる伝記として、また最新研究に基づくポパー哲学全体を俯瞰できる最良の入門としても広く読まれてきた定番書、待望の第2版。
内容説明
ウィーン出身の哲学者カール・ポパー(1902‐1994)。その思想は「批判的合理主義」として知られ、主として科学哲学や政治哲学の領域でこれまでに大きな影響を与えてきた。だが、この「知の巨人」の反証主義などの思想はたびたび誤解され、批判にもさらされてきた。本書は、ポパーを最も深く、かつ正確に理解する著者がそうした誤解を正し、ポパーの明晰さそのままに知の体系を解説するものである。『開かれた社会とその敵』の新訳も担当した著者による、いちばん信頼できる伝記として、また専門的見地に基づいたポパー哲学全体を俯瞰できる最良の入門書としても広く読まれてきた定番書、待望の改訂版。
目次
第1章 若きポパー
第2章 反証主義
第3章 社会科学の方法
第4章 開かれた社会とその敵
第5章 思想の冒険―論争の哲学
第6章 オープン・ユニヴァース
第7章 倫理
著者等紹介
小河原誠[コガワラマコト]
1947年生まれ。東北大学大学院博士課程退学。専攻は現代哲学。鹿児島大学教授、北里大学教授を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふみあき
41
政治哲学方面で高名な『開かれた社会とその敵』が文庫化されたというので、ポパーに初挑戦しようと書店に行ったら、分厚いのが全4巻で並んでいるのを見て完全に気おされた(同じ経験はピンカーの『暴力の人類史』でもしている)。そのまま逃げ帰るのも癪なので、代わりに買ってきたのが本書。何とか読了できたが、有名な反証可能性の理論、歴史法則主義への批判、進化論的認識論、三世界論と、ポパーの射程範囲の広さに圧倒される(私には特に非決定論が興味深かった)。まさに「遅れてやってきた啓蒙主義者」、古き良き時代の知識人といった印象。2025/08/24
buuupuuu
22
反証主義と情報量の関係の説明が目から鱗だった。情報量の大きい言明は確率が低く、反証を受ける可能性が高い。トートロジーは反証されることがないが、情報量はゼロである。反証主義は科学を、より情報量の大きい言明を探求する営みとして捉える。ポパーは誰かが決定的な知識を持ちうるということを認めない。全体主義やヒストリシズム、さらには決定論への彼の批判もそのような観点からなされている。確実性が得られないとしても、懐疑主義やニヒリズムに陥ることなく、現実的な発展についての見方を提案しようとするところにポパーの魅力がある。2024/07/27
読人
4
名著。タレブの著書でたびたび取り上げられているカール・ポパーについての初級レベルの解説本。初級といっても前提知識の不足もあって一部難解な個所もあったが、全体的に解説が丁寧でわかりやすい。帰納の問題から反証主義、非決定論、三世界による個人と理論の分離、善の追求ではなく悪の排除のみを行うべき等々読みどころが豊富。最後に掲載されている12の原則も良い。人は誤るのだからお互いに誤ることを前提に考えるべき、無謬ではなく可謬をうけいれよう。2024/08/22
ツッチャン
1
科学の反証主義を唱えた科学哲学者の解説書。それはまちがいがない。しかし、ポパーは圧倒的に、異常なほどそのわくにおさまらない。扱う領域が、科学の基礎だけではなく、古典力学、相対性理論、量子力学、進化論なども議論している。そのうえ、プラトン、マルクス、ウィトゲンシュタイン、ウィーン学団への合理的で、論理的な批判がある。そのどれもが、自らの批判的合理主義の実践だ。とてつもない広さと深み。イギリスでハイエクやタルスキと親交を深めた逸話に納得。知性・合理性を見失なう現代で、最も必要な哲学者。2025/08/14
1
ポパーは科学と疑似科学の境界問題に「反証可能性」という概念を持ち込んだことで有名だが、自由意志、政治哲学、非決定論、心の哲学、存在論(3世界論)、確率論など、様々な哲学に切り込んでいることがよくわかった。これだけ多分野を解説しながらもポパー独自の思想がわかるようになっており、かつブックガイドも丹念に書かれていて、非常に入門しやすいようになっていて親切。一点気になったのは、世界2(精神や意識の世界)の解説で、汎心論や随伴現象説があまりにも軽く切られていたこと(笑)2025/03/31
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