出版社内容情報
「私の茶碗」「私の箸」等、日本人以外には通じない感覚。こうした感覚を手がかりに日本の歴史を問い直した民俗学の名著を文庫化。解説 夏目琢史
「私の茶碗」「私の箸」等、日本人以外には通じない感覚。こうした感覚を手がかりに民衆の歴史を描き直した民俗学の名著を文庫化。解説 夏目琢史
===
長い年月をかけて積み重ねられてきた生活習慣は知らずしらずのうちにわれわれの精神や行動を規制している。家族それぞれの箸や茶碗が決まっており、自分以外はそれを使ってはならないというのはその代表例だろう。高取正男はこの日本人の無意識下にある感覚「ワタクシ」に着目し、現在の社会問題や歴史的事象の背景を探ろうとした。その際高取が重視したのは生活文化の変遷を凝視することであり、民俗調査を行い古老と向き合う中で実際に自分の内部にもひそむ日本的思考に気づくことだった。民俗学と歴史学を取り結び、新しい歴史記述のあり方を模索した記念碑的名著。
===
私の中の日本に気づく
理屈抜きの拒絶反応や禁忌によってのみ姿を見せる
近代以前から引き継いだ日本人の深層意識
===
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わ!
3
良い本です。50年前の本で、本当に純粋で綺麗な民俗学が書かれており、その手法によって、日本人の形が描きだされてゆきます。日本人の「個」と「公」の境界が特に明確に立ち上がってゆきます。昨今の混沌の時代を進む民俗学もそれはそれで仕方がありませんが、この時代の「迷いのない民俗学」も悪くありませんね。またここに描かれているような「神」へのあり方のようなものが、本当の日本の信仰なのだろうと思えます。名もない神、ただ信仰だけがある神が日本にはあちこちにあらわれて来ます。一度飾りを取り払い、元の姿と対面しても良いかも。2023/10/18