出版社内容情報
保苅 瑞穂[ホカリ ミズホ]
著・文・その他
内容説明
よく知られた“紅茶とマドレーヌ”やヴァントゥイユの小楽節との再会、海辺の乙女たち、祖母の死―。20世紀最高の小説『失われた時を求めて』から、著者が鍾愛してやまない場面を読み解き、この大作へ読者をいざなう。なぜプルーストはかくも多くの人々を魅了するのか。人間を見る際の認識が精細を極めていることはもとより、知覚対象がもつ生命の再創造を小説の言葉によって成し遂げたこと、それが読む者に精神の躍動、つまりは幸福感をもたらすからである。傑出したプルースト学者が、読書の愉悦をあますところなく伝える珠玉のエセー。
目次
1 雨上がりの森―序にかえて
2 水中花のように
3 音楽あるいは魂の交流―吉田秀和先生に
4 夜明けの停車場
5 海と娘と薔薇の茂み
6 オルフェウスの叫び
7 春の驟雨―井上究一郎先生に
8 死の舞踏―野田弘志に
著者等紹介
保苅瑞穂[ホカリミズホ]
1937‐2021年。東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。1964‐67年パリに留学。東京大学名誉教授、獨協大学名誉教授。専門はフランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
12
〈いいかえると、それは、出来事に対する語り手のなまの意識が、かれの語りに肉声の響きをあたえたことによる効果であって…〉読むこと、特に訳すこと、読みつつ訳し、訳しつつ読むことは、まさしく言葉と直面すること、書く指へと迫り、その痕跡を辿ること、言葉を選び取る指の、慄きと迷い、或いは喜びと決意に触れることなのだと実感する。〈この文章を引きたいために、わたしはここまで語ってきたような気さえする〉という言葉…魅惑された者が自らの辿らされてしまう運命を語る言葉として、印象に残る。夢幻を介してプルーストと結びつくもの…2022/10/06
うた
9
再読。作者が『失われた時を求めて』の好きな場面を引用しつつ、プルーストを読む楽しみを次から次へと語ってくれる。私の好きな場面も多く、かの長大な小説の最良の案内と言っても差し支えないだろう。水中花のように、音楽あるいは魂の交流も好きだが、今回はオルフェウスの叫びで、主人公が祖母を失った悲しみに喘ぐ場面が、私個人の経験も思い返されて特に胸に染みた。2022/09/23
kana0202
6
引用がいい。翻訳もいい。内容は非常にヒューマニスティックで、簡明。しかし奥深い。シンプルイズザベストか。なにより注目したいのは文体。吉田健一を彷彿とさせる、逆説・補足説明の入れ込み方がすごい。2022/09/20
ponco
3
本のタイトルとおり、本を読む喜びを思い出させてくれる本。本との向き合い方を考え直すいいきっかけとなった。この本を読み終えて、読み途中になっている、『失われた時を求めて』を読むことを再開することに決めた。今年1番出会えてよかった本。2022/11/23
takao
1
ふむ2025/04/01