出版社内容情報
マッサージ店で勤務する柳田譲、44歳、独身。傷つきやすく人付き合いが苦手な彼の心を迷惑な客や俗悪な同僚、老いた母や義父が削り取っていく。自分が暴発してしまうまえに自死することだけが希望となった柳田をさらに世界の図らざる悪意が翻弄する――。
太宰治『人間失格』を読んで、作家を目指した著者が送る令和の『人間失格』、第39回太宰治賞受賞作が待望の文庫化!
巻末対談 西村亨×町田康
【目次】
内容説明
マッサージ店で勤務する柳田譲、44歳、独身。傷つきやすく人付き合いが苦手な彼の心を迷惑な客や俗悪な同僚、老いた母や義父が削り取っていく。自分が暴発してしまうまえに自死することだけが希望となった柳田をさらに世界の図らざる悪意が翻弄する―。太宰治『人間失格』を読んで、作家を目指した著者が送る令和の『人間失格』、第39回太宰治賞受賞作が待望の文庫化!巻末対談、西村亨×町田康。
著者等紹介
西村亨[ニシムラリョウ]
1977年鹿児島県生まれ。鹿児島県立鹿児島水産高等学校卒業。2023年、「自分以外全員他人」で第39回太宰治賞受賞。同年、南日本文化賞奨励賞を受賞。2024年、『孤独への道は愛で敷き詰められている』が「本の雑誌年間ベストテン」の第3位に選ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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阿部義彦
17
ちくま文庫今月の新刊。よって書影も追いつかず。初めての作家、第39回大宰治賞受賞作。親本も筑摩書房でそこからの文庫化。何故これを買ったかと言うと、かなり昔にちくま文庫で、第36回大治治賞の作品、『空芯手帳』を文庫化してこれを読んだら面白かったので、今回のも巻末に町田康さんとの対談もあるので、興味を惹かれました。私個人的には大宰治はそんなに好きでは無いのですが。でも今回も読んで良かったです。流石ちくま文庫様々。駄目男の系譜ですが、他人を傷つけるのを恐れる余りに、絶食して自死しようと企てる男の物語。悪意とは?2025/09/15
おいしゃん
16
太宰治賞作品。主人公の理不尽な身勝手さ、中年男が暴発、と帯にあるが、読んでみるとまるで自分を見ているよう。生きづらいまでの繊細さ、行き過ぎた正義感、弱いくせに強がる、、、とても他人とは思えず途中から応援しながら読み進めた。2025/09/30
ちゃすくん
1
優しさや共感を、今自分がそういうムードにあるという俯瞰した思いで眺めていないと自分自身に裏切られることになるんだよなあ、なんてことを考えながら読んでいた。なおさら心なんて見えないものを前にドタバタ劇の格闘をしてしまうと、収拾がつかなくなっていく。モヤモヤの解消法なんてないんだけど、適度に悪に染まること、定点カメラを持たないこと、革命が血を流すこと、そういった倫理でも論理でもない脳の遊び、馬鹿になること?浅いな、わからんけど、深いとか適当な相槌に今日もイラつかないフリをして生きていこうと、いや死んでいこうと2025/10/07
dokusho_st
1
人間の限界点ギリギリのところで生きている柳田という一人の男の生き様をずっと読んでました。 多分こういう風に考えてる人って少なくないのではないのかなと思います。 私自身も少し分かると思う部分もあるし、でも道は踏み外さないし、踏み外さないように日々耐えてるけど、踏み外してしまったら全て終わりだななんて思いました。2025/10/05
ぽねごん
1
生きることが光かは知らんが、とにかく光の見出せぬ日々を送る中年男の一人称。ウィットだの諧謔だのを排した淡々とした文体であるが、その文体がよりこの人のどこか社会に馴染みにくい厄介さを浮き立たせるようで、心に迫り来るものがあった。読み手の自分からして、この人には分かると分からないのどちらをも感じるが、それがどうしようもなく人間である。2025/09/17




