出版社内容情報
丹念な取材から最新科学が示す「色の見え方」の驚くべき多様性と、悩ましい検査の問題が明らかに。各紙20世紀には、学校健診から雇用時検診までありとあらゆる場面で制度的色覚検査が行われ、「異常」の人には大きな制限が課されました。極端な扱いはなくなったものの、未だに前世紀の「色覚」観と検査の問題は社会の隅々にまで浸透しているように思えます。本書は、色覚に関する誤解を塗りかえるべく「色」をめぐる冒険へと旅立った科学作家が、進化生物学、視覚科学、ゲノム科学、医学等の最先端に接して、様々な事象を再点検。「色覚」とは何なのか。そもそも、あなたが見ている赤と私が見ている赤は同じなのだろうか? 取材の末見えてきたのは、「多様性と連続性」の新しい地平でした。多くの取材を通して得た「色覚」についての新しい知見と考察を重ねた1冊。
【目次】
新版の出版にあたって
はじめに
今、あらためて色覚を考える/ゲノム時代の練習問題/共鳴箱の中にいた/まずは自己紹介――小学生の色覚体験/就学や就労をめぐって/眼科医たちは警鐘を鳴らし、科学者は壮大なビジョンを描く/引き裂かれる感覚/ロードマップを示す
準備の章 「先天色覚異常」ってなんだろう
光そのものに色はついていない/分光分布(スペクトル)とは?/3色説と反対色説/色覚のセンサー「錐体細胞」が見つかった/「先天色覚異常」の仕組み/「先天色覚異常」が男性に多い理由/2色覚か3色覚か/「1型(P型)色覚」か「2型(D型)色覚」か/見え方はどう違う?/石原表は優秀な検査法である/「確定診断」にはアノマロスコープ/パネルD15は、「程度判定」と「タイプ分け」に活用される
第1部 “今”を知り、古きを温(たず)ねる
第1章 21世紀の眼科のリアリティ
パイプのけむりと21世紀/「色覚検査廃止」がもたらしたもの/就職の今昔/就職試験で「色覚異常」を知る/色覚の異常の程度による業務への支障の目安/論考「先天色覚異常の職業上の問題点」について/制度が変わると相談内容も変わる/自己責任の問題/検査を徹底すれば事態は改善できるのか/「色覚異常」はなぜ特別なのか/「目下の課題」と「背景の問題」
第2章 20世紀の当事者と社会のリアリティ
21世紀の新たな問題/2つの恐怖/当事者に残した傷跡をたどる/まずは本人が衝撃を受ける/母親の動揺/一族の問題/検定教科書が「職業適性」を語る/「結婚はよく考えろ」と教科書に書いてある!/背景には優生思想/「色盲」は優生手術の対象だった?/進学や就職をめぐって/理工では化学系、教育系では小学校課程の制限が大きい/1985年以降の進学/すべての業種に制限がある/1986年以降の就職/排除の装置として使われた?/循環する議論と閉塞感
第2部 21世紀の色覚のサイエンス
第3章 色覚の進化と遺伝
景色が変わる体験/魚類から霊長類まで/森の環境が色覚の進化をうながした?/ヒトの4割は「色覚異常」?/野生の広鼻猿の行動研究へ/「3色型」は有利ではない?/実は、「2色型」の方が有利?/飼育下のサルでも裏付けがある「2色型」の有利/やっとみつかった「3色型」のメリット/ヒトの色覚進化をめぐって/ヒトの「2色覚」「異常3色覚」が有利な局面/色覚「異常」ではない?多様性だ/異常だとしたら、とてももたない/ヒトの色覚は「多様性」を体現する/とはいっても見えていない/背景に優生学の反省がある?
第4章 目に入った光が色になるまで
21世紀のサイエンスへ/「色の弁別」と「色の見え」は違う/水晶体は
-
- 和書
- 財務会計 (第10版)