出版社内容情報
桑原甲子雄が撮影した留守家族たち、出征してその写真を受け取った横丁の兵士たちの戦中・戦後を記録した傑作ルポ。解説 鶴見俊輔/児玉也一
内容説明
戦後30年を前にした東京・台東区の下町で、著者は、戦時中に桑原甲子雄により撮られた「氏名不詳」の人びとを探して、ひたすら露地を歩き、家の戸をたたいた。そうして探し当てた彼らが語ったのは、戦場と横丁、それぞれに降りかかった「戦争」だった。写真の留守家族たち、一銭五厘のハガキで出征した横丁の兵士たちの戦中・戦後を記録したルポルタージュの名著。
著者等紹介
児玉隆也[コダマタカヤ]
1937‐75年。ルポライター。兵庫県生まれ。60年、早稲田大学卒業後に光文社入社。『女性自身』編集部を経て72年よりフリーに。『文藝春秋』1974年11月号に発表した「淋しき越山会の女王」は田中角栄首相退陣の契機となり、文藝春秋読者賞を受賞。また本書『一銭五厘たちの横丁』は死後、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した
桑原甲子雄[クワバラキネオ]
1913‐2007年。写真家。東京市下谷区車坂(現・台東区東上野)生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
81
一銭5厘とは太平洋戦争終戦前の郵便葉書料金のことで、これを徴兵・召集される兵士の命にたとえたもの 。東京の下町。一銭5厘で徴収され残された家族を撮ったのが桑原甲子雄という写真家。著者はこの写真で当時の家族の今、出兵した兵隊の消息をインタビューを交えて解説して言える。この本は昭和48年頃に書かれた本、当時はまだ戦後30年くらい、当時の様子や思い出を語ることができる人が沢山いた。露路で遊んだ幼馴染がみんな戦死している話や、写真の多くは名前不詳も多い。屈託のない笑顔の少年、不安げな家族たちの写真が載っている、2025/06/17
フジ
1
本やメディアで触れる戦争は、戦地にいた兵隊や激戦地のことが多い。日本で言えば沖縄線や原爆、東京大空襲あたりだろうか。それらも非常に大切なことであるが、写真に写っているような市井の人々が戦時下をどう過ごしていたか、戦争をどう感じていたかを知ることができ、非常に貴重な読書体験であった。こういうことをもっと知りたい。著者の皆さまにお礼を言いたい。2025/06/17