出版社内容情報
AI翻訳なんか怖くない!(ただし、当分のあいだは……)フランス文学の名翻訳者が、言語と思考の連環について考えた軽妙なエッセー。
内容説明
AIが高度な翻訳をしてくれる時代に、「それでも人間が翻訳をする」ことの意義はどこにあるのだろう?私たちは言語とどう向き合うことになるのだろう?フランス文学の名翻訳者が、その営為の本質に迫り、言葉・文学・世界に思索をめぐらせる極上のエッセー。『翻訳教育』(2014年)を改題し、あらたに1章を増補した文庫版。
目次
1 翻訳の大いなる連鎖
2 翻訳家の情熱と受苦
3 ロマン派の旗のもとに
4 再現芸術としての翻訳
5 偉大な読者たち―マーラーと〓外
6 永遠に女性的なるもの?
7 翻訳教育
8 合言葉は「かのように」
9 トランスレーターズ・ハイ
10 翻訳の味わい
11 AI翻訳なんか怖くない
著者等紹介
野崎歓[ノザキカン]
1959年新潟県生まれ。フランス文学者、翻訳家、エッセイスト。放送大学教養学部教授、東京大学名誉教授。2001年に『ジャン・ルノワール―越境する映画』でサントリー学芸賞、2006年に『赤ちゃん教育』で講談社エッセイ賞、2011年に『異邦の香り―ネルヴァル『東方紀行』論』で読売文学賞(研究・翻訳賞)、2019年に『水の匂いがするようだ―井伏鱒二のほうへ』で角川財団学芸賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
26
5月の新刊。姉がこの本を見て、貸してくれと言ったので、じゃ片付けとくかと読了。著者は姉と同じ歳で東大名誉教授で専門は仏文学で翻訳家でも有る。プルースト好きの姉なら良く知ってる方だったのでしょう。主に翻訳に纏わる苦労話などが軽いタッチで綴られてます。特に森鴎外に関する話はかなり面白かった。日本で初めてゲーテの『ファウスト』を訳した前後の事情とマーラーとの関わりを実にスリリングに紐解き娘の茉莉の仏での様子、その子供のジャク(命名鴎外)は後に東大仏文科の教授となり、退官二年前に著者は直に授業を受けたそうです。2025/05/25
ゆう
9
仏文学・翻訳家のエッセイ。ミシェル・ウエルベックの作品の訳者で親しみを抱いたのだが、エッセイで人となりを知るとより魅力的に感じる。翻訳家は原作者と同一化しながら原書の殺害と日本語訳の創造を行うという翻訳論には、なるほどと翻訳者の感覚がわかったような気になった(2章翻訳家の情熱と受苦、猿と殺人者、39頁3行〜41頁7行) 日々、たんたんと訳し続ける翻訳者への感謝の念が増した。 著者が多感な時期に影響を受けた本、堀口大學『月下の一群』を買ってしまった。読者が微笑んでしまうエピソードもあり飽きなかった。2025/11/08
Susumu Kobayashi
9
ぼくなどが翻訳をやっていていいのかという気がするが、この本を読んでいるといいのだという肯定的な気分になれる。「外国語と対峙し、翻って日本語に立ち戻る作業は、日本語にたえず栄養を補給し、その生命の核心を支え続けてきた。その運動を途切れさせてはならないだろう」(p. 246)。青山南のくだり(p. 41)と著者の奥さんが中国ドラマにのめりこみ、中国語学習に熱心になりというくだり(p. 251)で爆笑。森鷗外を読んでみたくなった。2025/08/31
sataka
5
シンプルながら気品を感じる日本語で、本や人の話をしている時が一番面白いといういかにも翻訳家的なエッセイ。本の紹介は本当に巧みで、著者が訳したものも先人の訳のものも読みたくなるから困る。読書のモチベーションアップに使えそう。2025/05/16
timeturner
3
文学を愛してやまない著者が作者と作品への熱い思いを綴るエッセイ集。文学青年がそのまま大人になったような雰囲気に惹かれる。翻訳という行為を音楽にまで敷衍して考えているのには驚いたけどすごく納得できる。森鴎外の『渋江抽斎』を読みたくなった。2025/10/05
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- 和書
- 閃光 角川文庫




