出版社内容情報
強烈な知人たちとの奇妙な会話、突飛なエピソード、滲み出す虚無感。戦後派の巨匠が贈る昭和のユーモア短編集、待望の復刊。解説 荻原魚雷
内容説明
ウスバカと大バカの違いとは?善友・悪友ときて、益友とは?買ってきたタコは何故七本脚なのか?主人公のもとをたびたび訪れては奇妙な問答を繰り返し、何かを押し付けたりやらせたりする男・山名君との珍妙なやりとりが絶妙な連作ほか、語り手と友人知人が紡ぐ物語10編。戦後派の巨匠にして、虚無と表裏のユーモアで独特な存在感を示した著者、最後の傑作短編集。
著者等紹介
梅崎春生[ウメザキハルオ]
1915年福岡市生まれ。東京帝国大学国文学科卒。在学中に「風宴」発表。42年陸軍に、44年海軍に召集、暗号通信分遣隊長として坊ノ津で終戦を迎える。復員後、戦争体験をもとに『桜島』『日の果て』を発表、一躍第一次戦後派作家の代表的存在となる。「ボロ家の春秋」で直木賞、『砂時計』で新潮社文学賞、『狂い凧』で芸術選奨文部大臣賞、『幻化』で毎日出版文化賞。1965年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
72
これは楽しいゾ!「大バカvs.ウスバカ」の談義自体がバカバカしくて大好きです。なんでも、バカの程度は「大バカ>ウスバカ」、侮辱度は「大バカ<ウスバカ」www2025/07/04
阿部義彦
23
ちくま文庫3月の新刊。梅崎春生さんは、これで2冊目ですが、実にとぼけてかつ刺激的、中毒性のある作家です。友人の山名君と言うのが良く登場するが、この人物は実在しているのを、解説の荻原魚雷さんの文章で知りました。実に珍妙で突飛な問答でたまりません!直木賞受賞の「ボロ家の春秋」もぜひ読んでみたい。2025/03/29
Inzaghico (Etsuko Oshita)
13
主人公の家に居候していた山名君(挿絵画家の秋野卓美)との嚙み合わないのになぜかうまいこと着地する話は、ボタンの掛け違いで着ていた洋服が、一周回っておしゃれ(本作の場合はユーモアとして完成しているとでもいおうか)に見えてくるような魅力がある。この山名君、戦後は闇屋をやっていたせいか、主人公が欲しいものを何でも手に入れて持ってきてくれるはいいが、連れてきた犬猫がどれもふつうではない。最後の「Sの背中」は、悲喜劇の短編として嚆矢。悲しい、哀しい話なのに、そこはかとないユーモアが漂う。2025/05/25
藤井宏
12
著者のことは存じ上げませんでしたが、どの話もくすっと笑えました。肝臓が悪いのに「肝臓をあまり甘やかしてはいけない。時には大酒を飲んで肝臓をいじめた方がいい」と忠告する病院の万年患者!彼は入院しつづけるために、わざと転倒・転落する。もうめちゃくちゃ。「猿沢佐助の背中には、きっと一つの痣がある」からはじまる「Sの背中」もおもしろかったです。 2025/06/05
さとまる
11
面白い!梅崎のユーモア短編小説を11編収録しているが、その大半が梅崎自身の身の回りに起こったことを描いたエッセイに近いものになっている。中でも梅崎家に出入りする「山名君」が巻き起こすドタバタ劇は『ボロ屋の春秋』を思い起こさせる。それにしてもここ最近梅崎の復刊が続くなぁ。ありがたいけどブームなのかな。2025/03/14