出版社内容情報
「私は酒がやめられないのである」情けない、仕方ない、しかし不思議と憎めず愛しい人間模様。全ての酒呑みに捧ぐ傑作短編集復刊!解説青柳いづみこ
内容説明
「小生、この度感ずるところあって、酒を止めることにしました。断然止めたいと思います。」「酒を飲むから、仕事が出来ぬ。仕事が出来ぬから、金があんまり入らない。」(「禁酒宣言」)止せずいいのに今日も今日とてふつか酔い、後悔してももう遅い。確かな筆致で人間の生活を描き続けた私小説作家・上林暁の世界から坪内祐三が選りすぐる、ユニークな酒場小説集。
著者等紹介
上林暁[カンバヤシアカツキ]
1902年、高知県生まれ。東京大学英文科卒業後、改造社に入社。初の短編集『薔薇盗人』を刊行後、作家生活へ入る。妻の病、戦争による生活環境の悪化をくぐりぬけ作品を発表し続ける。「白い屋形船」で読売文学賞、「ブロンズの首」で川端康成文学賞を受賞。1980年逝去
坪内祐三[ツボウチユウゾウ]
1958年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院修士課程修了。編集者を経て文筆家へ。1997年『ストリートワイズ』でデビュー。2001年『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』で講談社エッセイ賞受賞。2020年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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チェアー
5
私小説はその時期の空気を伝える。読み終えると、自分の周りの空気が少し変わって澱んでいるようにも思える。澱みを澱みとして伝える術を上林は持っていた。そして、澱みにあるなにかかけがえのないもの、ほんの少しの大切なものを見せてくれる。2025/04/23
hitsuji023
4
私のようなおじさんにはホッと一息つけるような小説だった。特にこれといった物語はないのだけど、飲み屋のおかみとのやりとりに情緒がある。歌の歌詞じゃないけれど、なんでもないようなことが幸せだったと思うんだよなあと一人読後に思った。2025/03/14