出版社内容情報
思想の意味を見失い、放蕩と諦観の果てに洲之内が見出した誠意とは? 最初期の批評を含む美術エッセイの名筆を集めたアンソロジー第2弾。
内容説明
「「かすみ草」を見ていると、私はふしぎに、いま自分はひとりだという気がする。いい絵はみんなそうかもしれない」白洲正子がその審美眼に全幅の信頼を寄せた「目利き」洲之内徹。獄中「転向」によって思想の意味を見失い、その場その場を生き延びる習性を身につけた。放蕩と諦観の果てに、洲之内が見出した美への「誠意」とは―。戦前に書かれた最初期の批評を含む美術エッセイの名筆を集めたアンソロジー第2弾。
目次
批評精神と批評家根性と
結構な御身分
雑感
薬瓶
穴を掘る
同姓同名
岸田劉生「西瓜喰ふ童女」
靉光「鳥」
長谷川〓二郎「猫」
曹良奎「マンホール B」
大正幻想
中野坂上のこおろぎ
羊について
自転車について
栗ノ木川に風船が浮んだ
スノウィッチ・トオルスキー氏の憂愁
猫は昨日の猫ならず
X関係
私の青べか
シテ・ファルギェールのアトリエ〔ほか〕
著者等紹介
洲之内徹[スノウチトオル]
1913‐87年。愛媛県出身。美術エッセイスト、小説家、画商
椹木野衣[サワラギノイ]
1962年埼玉県秩父市生まれ。美術批評家。多摩美術大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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阿部義彦
15
ちくま文庫、一月ほど前の新刊。洲之内徹さんと云う、画商をやっていた美術エッセイスト、文筆家を知る事が出来たのは、収穫でした。この第二弾のエッセイ集にも、代表作「気まぐれ美術館」のみならず、文学者としての雑感、精神性に関する拠り所の話など、実に筋の通った純然たる魂が息づいている。また、エッセイに関しては、あちこちに脱線したり、あのことを書こうと思っていたが、気が変わったので、別のことを書こうと思う、などと思いのままに見えるユーモア溢れる独自の筆致を味わいました。編者の椹木野衣さんに感謝したい。2024/09/16
Ta283
1
エッセイ第2弾は戦前から戦後まで幅広く収録2025/04/12
Hotspur
1
下巻には『気まぐれ美術館』の他に『洲之内徹文学集成』(2008)からの抜粋が加わる。これには古い文(1930年代)や新しい文(1980年代)が含まれるが、古い文は当然ながら些かつまらない。洲之内徹は文は還暦を過ぎてからの文の方が断然楽しい。編者椹木野衣氏が巻末解説で『文学集成』からの抜粋を引用しながらいろいろ分析を試みているが、洲之内徹の脱線的魅力はこれら批評的分析の彼方にあると思われる。なにしろ藝術新潮の連載をこれだけ続け、弊方がほとんど知らない日本の画家をネタにしてこれだけ読ませるのだから。2025/02/05
ひろふみ
0
厳選エッセイ2冊分の2巻目。正直なところ絵の好みは殆ど合わない。それでも心惹かれるのは、酒・絵画・異性を含め人生を決めつける表現の数々。例えばこんな・・・桜は、こうやってこういうところで酒を飲んだり歌ったりする合図のようなものである。今年もやろうぜ、というわけだ(p.237)。2025/05/01
僕素朴
0
学生のときと違って画家の名前を検索して作風や逸話を確認しながら読み進められる。無粋な読み方かもしれないが、これはこれで贅沢な読み方だとウイスキーなめながら思う。もし願いが叶うなら洲之内徹に自分を主題にいい感じのエッセイを書いてもらいたい。「売れるような絵をかこうとして、誰も彼もが浮身をやつしている」(曹良奎「マンホールB」)、「本人の気に入らなかった峰村リツ子の肖像画展」「絵っぷりのいい絵がいまは無くなった」(林倭衛の「絵っぷり」をたたえて)。「あの針金の線を引いていく春草の緊張した筆の動きを思うと→2024/11/30