出版社内容情報
幻想と現実のあわいに仕舞われた、すこし変てこで愛しいできごと。一つひとつのおはなしが静かな奇蹟をよぶ、光にみちた小説集。書き下ろし短編も!
一編ずつが、空気のいい場所への日帰りの遠出。
いしいしんじと書いて融通無碍と読みたい。
――江國香織
何があったのか根堀り葉掘り訊くのではなく、静かに、一緒に、時間を過ごす。
究極の優しさのように思えた。
――松永美穂(解説より)
眠る前にそっと撫でたくなる、光にみちた小説集
体がぽろぽろと土に変わってしまう病気をわずらう兄と、その土を一粒のこらずあつめてバラを育てる弟(「土」)。不思議な花びらがいざなう"おはなしと水でできている島"(「ジュプン」。遠い異国を、ひみつの記憶を、大切な思い出を旅するように紡がれるいしいしんじの世界。小さなきらめきをとじ込めた29のおはなし集。単行本未収録1編&特別書き下ろし短編「光あれ」を増補!
片隅にひそむ小さな光をやさしく掬い上げてくれる――これは、そんなおはなし。
内容説明
体がぽろぽろと土に変わってしまう病気をわずらう兄と、その土を一粒のこらずあつめてバラを育てる弟(「土」)。不思議な花びらがいざなう“おはなしと水でできている島”(「ジュプン」)。遠い異国を、ひみつの記憶を、大切な思い出を旅するように紡がれるいしいしんじの世界。小さなきらめきをとじ込めた29のおはなし集。単行本未収録1編&書き下ろし「光あれ」を増補。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タイコウチ
9
一時期よく読んでいたいしいしんじさんの短編集を久しぶりに。それぞれかなり短めの作品が多いが、語り出しから少し奇妙な世界にぐっと引き込み、現実がまるでアニメのようにぐんと飛躍していく描き方は本当に独特で、語り口になんとも言えない勢いがある。郊外に出かける電車で「短編小説」に出会うという書き出しの「窓」という作品を、自分も郊外に出かける電車の中で読んでいたのは面白い偶然で、あのときの浮遊感は忘れがたい。ちなみに本屋でこの本にふと手が伸びたのは、マリア・シュナイダー(ジャズ作曲家・指揮者)の来日が楽しみだから。2024/06/30
汲平
8
掌編集。寝る前に1作か2作。中には作者のイマジネーションの翼に乗り切れずに終わった作品もありますが、それで安眠できます。最後の「光あれ」が素晴らしかったので、終わり良ければすべてよし、です。2024/09/06
chacha子
5
あったかいお話ばかりだった。いしいさんの優しさみたいなものが伝わってきた。2024/06/06
タンク
4
いっぺんに読んでしまうのがもったいなく思えて、寝しなにひとつずつ。世代も性別も国籍も、何なら時空も超越してるんじゃないかと思わせる文章は、まさに江國さんが仰せの通り「融通無碍」ですねえいやはや。 薦めていただいてはじめてのいしいしんじさんでしたが、今年読んだ中でいちばんかもしれん。『土』『煙をくゆらせる男』『園子』『自然と、きこえてくる音』『オリーブの木』『ウミノウマ』などなど、それはそれは粒揃いですぜ。2024/12/13
ももいろ☆モンゴリラン
4
いとおしい、なつかしい、救いがあったりなかったり、それでもなんだかやさしい感じ。単著の既刊はたぶん全部持ってる。好きです…!短編になると言葉の鋭さというかピントがより精緻になって「すみません、もう一度お願いします。東京ドームに正岡子規?」となる。それもあと数行読めばまぁそんなこともありましょうや読みましょうやとなるのが著者のワザ。書き下ろしの『光りあれ』は締めくくりにふさわしい、もはや神話の域。2024/05/06