出版社内容情報
少女工員の労働の日々を描く第一作「キャラメル工場から」をはじめ、労働、地下活動、戦争の経験などを描き昭和を駆け抜けた作家、最良の短篇選集。
内容説明
少女工員の労働の日々を描いたデビュー作「キャラメル工場から」、非合法の地下政治活動での女性の心の傷を描く「疵あと」、女ともだちとの数十年ぶりの再会と過去の事件を描く「時に佇つ その五」…労働、地下活動、戦争、東京や長崎の町、懐かしい友人たちについて自らの経験をもとに書き続け、昭和を駆け抜けた作家、佐多稲子。その最良の16篇を厳選した文庫オリジナルの短篇選集。
著者等紹介
佐多稲子[サタイネコ]
小説家。1904年、長崎県生まれ。15年、一家をあげて上京。その後、キャラメル工場、料理屋、日本橋丸善、カフェーなどで働く。28年、第一作「キャラメル工場から」を発表。その後、労働、共産党の地下活動、戦争、夫婦や家族などについて、自らの経験などに基づき数多くの作品を発表した。著書に『樹影』(野間文芸賞)、『時に佇つ』(川端康成文学賞)、『夏の栞』(毎日芸術賞)(以上、講談社文芸文庫)などがある。98年没
佐久間文子[サクマアヤコ]
文芸ジャーナリスト。1964年、大阪府生まれ。朝日新聞記者を経て、現在フリーランス(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
35
佐多稲子生誕120年だという。6月1日はお誕生日でした。私は佐多稲子の「樹影」という長編小説で卒論を書いた佐多稲子ファンで生誕120年という節目に佐多稲子が再び刊行されることがとても嬉しい。30年ぶりくらいに読む作品ばかりで、「キャラメル工場から」の主人公の父親はこんなにろくでなしだったっけなどと思ったり。どの作品も良いけれど中野重治原泉夫妻を思わせる「プロレタリア女優」が好きです。どの作品にも言えることですが弱い者への優しいまなざい、静かな文体がとても好きです。2024/06/11
燃えつきた棒
34
佐田稲子の「キャラメル工場から」のことは、たぶん五、六年前の「夏の文学教室」で聞いたのが初めてだと思う。 講師は中島京子だったと思うが、とてもほめていた記憶がある。 ところが、僕のような天邪鬼の場合、誰かがほめていたということが、返ってその作品を評価する際のバーを数センチだけ押し上げてしまうことがある。 どうやら、今回もそのシステムが作動したようだ。 というわけで、僕には世評ほど素晴らしい作品とは感じられなかった。 貧しい少女が主人公の初期の作品などは違和感なく読めるのだが、作家として名をなした後の→2024/10/25
花林糖
14
とても良かったです。初期から晩年までの16作、発表順に掲載。特に良かったのは昭和初期のプロレタリア文学を代表する、表題作「キャラメル工場から」。尋常小学校五年生のひろ子が父親にキャラメル工場に働きに行かされる話。他、良縁を断る女性の話「かげ」、戦時中の隣組の話「乾いた風」等。(キャラメル工場から/怒り/プロレタリア女優/牡丹のある家/橋にかかる夢(『私の東京地図』より)/女作者/虚偽/薄曇りの秋の日/狭い庭/乾いた風/色のない画/水/かげ/疵あと/時に佇つ その5/こころ)2024/06/05
そうたそ
13
★★☆☆☆ 女性のプロレタリア文学というのは読んだことがなく新鮮。当時は男女の置かれた立場は全く違うものであったが故、当然男が書くか女が書くかでその内容も違ってくる。少女工員の労働の日々を描いた表題作他、戦時で労働に追われる様などが描かれる諸作を収める短編集。とにかく文章が素晴らしい。プロレタリア文学に見る男性らの過酷さとは異なる、女性たちが感じてきた辛さや哀しみのようなものが見て取れる。だが、ストーリーとしては響くものがあったかというと、そうでもなかったかも。2025/03/13
たっきー
12
1904年長崎に生まれた著者の短編集。「虚偽」、「みず」、「時に佇つ その五」が好みの作品。2024/05/20