出版社内容情報
現代思想における震源地であるラカン。その核心に実践臨床という入射角から迫る超入門の書。『疾風怒濤精神分析入門』増補改訂版。解説 向井雅明
千葉雅也氏推薦
「まず最初に読むべきラカン入門書です。」
二十世紀における思想的な震源地のひとつであるラカン。その理論は、思想としての側面と、実践臨床としての側面の二面性をもち、両者が渾然一体となっていることに難しさがある。本書は、著者みずからの精神分析の体験にもとづき、実践臨床の側面からラカンの本丸に迫る。ラカンの核心を読み解く超入門の書、『疾風怒濤精神分析入門』増補改訂版。
解説 向井雅明
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほし
16
非常に分かりやすいラカンの入門書。ラカンの理論のみならず、実際にどのように分析を行うかという臨床の立場からの解説もあるため具体的なイメージがしやすくなっています。ラカンにおいて、健常者というカテゴリーは存在せず、すべての人は神経症者、精神病者、倒錯者に分類されるというのが非常に興味深い。エディプス・コンプレクスや、対象aといった難解さ極まる概念も平易に説明がされています。≪他者≫の世界に生み落とされた私たちが、<理想>を手放し、特異性へと至るための精神分析という営み。ラカンへの入口としてお勧めの一冊です。2023/10/19
ゆう
14
めちゃくちゃ分かりやすくて、とても良い本。フロイトが開始した精神分析の理論を、その使用言語の関係性を構造的にみていくことで、より抽象化したのがラカンなのだと理解した。本書でも繰り返しラカンが使用するタームは、既存のジェンダー/セックスの枠組み内でベタに使用されているそれを直接意味しないということが強調されるが、ではなぜ選択されたのがその名詞でなくてはならないのかという問題については留保されている。後期のフロイトに死の欲動というそれまでの理論を一部無化するような概念が、ラカンにも出てくるところは特に面白い。2025/06/07
koke
13
50年代ラカンのたぶん今までで最も明快な解説。ラカン派精神分析の場で何が起きているのかについても、ネガティブな面含め神秘化せずに報告している。精神分析を受ける人は、唯一大事なのは生き方(倫理)の問題だという、ある意味当たり前のことに立ち返ることになる。だから、自分の核にある特異性が世間に受け入れられないヤバいものだったとしても、それを引き受ける生き方をどうにか発明しなければならない。その点で、本書では軽く触れるだけだったが、精神分析の他に芸術や政治も役に立つはずだ。2023/11/26
rinakko
9
難しいかな…とも思いつつ、引き込まれる内容で面白かった。こういう本を時々読みたくなるのは、何かしら必要としているからだろう。2025/02/10
Asakura Arata
9
わかりやすいラカンの解説書。しかし、この世に救いがないということがこれでもかというように書いてあり、読んでいるうちに気が滅入ってくる。その対策として精神分析やりなさいと言っているようにも取れる。 いずれにしても、今の西洋文明の中でしか通用しない思想だと思う。鏡がなかった時代はどう説明するのか?とか。西洋文明が袋小路に来ている現代に、精神分析の思想そのものが生き残れるのか心配になる。2024/02/22