出版社内容情報
高野 慎三[タカノ シンゾウ]
著・文・その他
内容説明
60数年前、人々は貸本屋から本を借りて読むことが、ささやかな娯楽だった。とくに貸本マンガと呼ばれる作品群は、子どもや若い労働者たちの心をつかんだ。そのなかには若き日の白土三平、つげ義春、さいとう・たかを等の作品があった。戦後社会のあだ花のように咲いた貸本文化の全貌に迫る!『貸本マンガと戦後の風景』を改題・文庫化。
目次
第1章 貸本マンガの誕生まで
第2章 貸本マンガの隆盛
第3章 貸本マンガ・一九六〇
第4章 貸本マンガ 衰退期の光芒
第5章 貸本マンガと新宿・十二社と
第6章 貸本マンガと戦後大衆文化
第7章 貸本マンガの「場所」
著者等紹介
高野慎三[タカノシンゾウ]
1940年東京生まれ。書評紙「日本読書新聞」勤務を経て、1966年5月に青林堂入社。『月刊漫画ガロ』の編集に携わる。1971年12月に退社。北冬書房を設立、『夜行』『幻燈』などの刊行を続けて現在にいたる。一方、1967年には、石子順造、菊地浅次郎(山根貞男)、梶井純とともに『漫画主義』を創刊する。また、1999年には貸本マンガ史研究会の創立に参加する。ペンネーム「権藤晋」での著作も数多い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
95
昭和30年代頃に数多く出版され貸本屋に流通していたマンガ本について。貸本は小学生の頃うちから10mくらいのところに駄菓子屋と貸本屋を営んでいた店があった。少年マガジンや少年サンデーなどに混じって水木しげるや白土三平、つげ義春の貸本があったのをおぼろげに記憶している。白土三平は難しいのでもっぱらもっぱら恐怖モノを借り空き地で回し読みをした。本には汚れを防ぐのにグラシン紙がかけられてそのすれる音が懐かしい。この本はもっとノスタルジーあfれるものかと思いきや難しかったのが残念。図書館本2023/03/14
佐島楓
73
手塚治虫や水木しげるといったビッグネームが貸本屋に作品を納めていたのは有名だが、それ以外にも「ガロ」で一時代を築いたような漫画家はずいぶん貸本出身だったようだ。独特の丸っこい少年向けの線から劇画的な絵に移行していく変遷、やはり特殊な少女向け漫画の絵柄など、おもしろいと感じる図版が多く掲載されている。貸本文化は半世紀ほど前に消滅してしまった文化だけに、本書のような作品を残すことは意義深い。2022/08/30
阿部義彦
15
文庫オリジナルで「神保町『ガロ』編集室界隈」を出した著者のこちらは他社(論創社)から『貸本マンガと戦後の風景』の名前で出たのを改題して同じちくまで文庫化したものです。水木しげる、さいとう・たかを、白土三平、などについて詳しく触れられており、ほとんどの方が物故している中、つげ義春さんだけご健在で本当に貴重な生き証人ですね。私も小中学までは近所の貸本屋から借りてました、主にガロよりはCOMの「火の鳥」なんかで、当時はつげ義春さんなんて知る由もなかったです。貸出表があって資料的にも納得会員証なんて無かったもん。2022/08/11
栄吉
4
★★★☆☆ 貸本文化についての一冊。リアルタイムの世代では無いが興味深く読む。戦後の娯楽の一つ。今はネットでも読める時代になり、古き良き?文化だったと思う。2022/10/07
まどの一哉
4
マンガの歴史やマンガ界全般に興味が無く、マンガを研究することもないので極私的な感想を持つばかりだ。 著者高野さんが常に説いているのが、作品が描かれた状況を理解することだが、やはり貸本マンガ全般よりもつげ義春や水木しげるなどの作品の背景を読み解く方が面白い。2022/10/04