出版社内容情報
その儚い美しさによって数多の人間の心を奪い、描かれ、求められ続けている「桜」という花――。妖しく咲き乱れる名華を厳選! 新機軸怪談傑作選。
内容説明
儚くも圧倒的な美によって、我々の目を奪う「桜」という花―。古より繰り返し描かれ、求められてきた主題の魅力が尽きることはない。妖しく咲き乱れる名華を厳選!百花繚乱の怪談傑作選。
著者等紹介
東雅夫[ヒガシマサオ]
1958年、神奈川県生まれ。アンソロジスト、文芸評論家。「幻想文学」「幽」編集長を歴任。ちくま文庫「文豪怪談傑作選」「文豪怪談ライバルズ!」シリーズはじめ編纂・監修書多数。著書に『遠野物語と怪談の時代』(日本推理作家協会賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
93
桜幻想譚アンソロジー。桜の風情が醸し出す妖異な美しさが各篇に詰まっていた。文体や形式も多彩で七変化のような読み心地となり気が付けば桜づくしの世界にすっかり酩酊気分。「桜の樹の下には屍体が…」というギョッとなる文は梶井作品だったのだなあと。そして安吾も桜の無言の美しさの陰に狂おしい趣きを見つけてしまった一人なのだろうか。高田衛による評論のグロ・美・笑い・異常・恐怖に合点。泉鏡花「桜心中」は慣れない文語調だったが読み進めるほどそのリズムにハマった。他では日野啓三の奇妙な往復書簡、倉橋由美子の連作が気になった。2022/04/08
KAZOO
81
東さんの編纂による三冊目の「桜」に係る怪奇アンソロジー集です。さくらというと華やかな満開の桜を思い出しますが、むかしからその根元には「死体」が埋まっているのではないかというイメージが植え付けられていました。定番の梶井、坂口のほかにもさまざまな作者の作品が収められていて楽しめました。とくに小泉八雲、加門七海が私には印象に残りました。2022/01/18
さつき
72
泉鏡花から始まり、梶井基次郎、坂口安吾など錚々たる顔触れの桜×怪談アンソロジー。人は何故、桜に魔を見るのか。こんなに美しい花だから心浮き立つ思いにもなるけれど自分自身の心の闇や虚ろをも映しやすいのでしょうか。あまりに難解で正直言って感想が浮かばない作品もありましたし、ぞっとするほど気持ちがわかるなぁと思うものもありました。桜吹雪を眺めつつ心に残る読書になりました。2022/04/06
藤月はな(灯れ松明の火)
62
虚空、または異界に誘い、攫うように人々に降りしきり、咲き乱れる桜。その妖美さは死体を糧にしているのではないかと思わせるような凄みを帯びている。既読が多いが、中上健次氏の「桜川」が印象深い。ここでは桜の妖艶さでも隠し、守り切れずに巻き添えになった子供への追悼が込められているから。そして「消えてゆく風景」は桜の醜さ(鼻に突く青臭い樹液の匂いと指に纏わりつく感触の気持ち悪さ、幹かと思いきや蠢く毛虫の群れなど)を真っ向に描いていて好きです。展開も問答で構成して実存が透けていくような展開もSF的とも怪奇的とも取れる2022/02/27
しばこ
13
桜が咲くこの時期にぴったりのアンソロジー。「桜の樹の下には」と「桜の森の満開の下」が続けて読めたのは嬉しい。 桜の持つ魅力と魔力とは、人が勝手に感じ取っているものだけれど、物語の中で十分存在感を感じさせるのもやはり桜ならでは。2022/03/28
-
- 和書
- 愛に気づいて