出版社内容情報
鬼才・都筑道夫の隠れた名作を増補し文庫化。〈女性〉をメインに据えた予測不能のサスペンス小説集。日下三蔵による詳細な解説も収録した決定版。
内容説明
若い男との同棲の末、殺害を決意する女の想い、喫茶店に嫌がらせの落書きを続ける女の目的、給料強盗事件の真相を知ったことで性格が豹変する女の心理―。“女性”を各作品のメインに据えたサスペンス小説集。彼女たちの行動や思惑、二面性が物語に波乱を巻き起こし予測不能の結末を用意する。単行本未収録の短篇2作を増補し、日下三蔵氏の詳細な解説を付した。鬼才・都筑道夫の隠れた名作。
著者等紹介
都筑道夫[ツズキミチオ]
1929‐2003年。東京生まれ。早稲田実業学校を中退。雑誌編集のかたわら十代後半から時代小説を執筆。のち推理小説の翻訳に携り、1956年早川書房入社。「エラリイクイーンズミステリマガジン」の編集長を務め、「ハヤカワ・SF・シリーズ」の創刊に尽力。1961年「やぶにらみの時計」を発表。以後、多数の人気作を発表。評論やエッセイでも活躍。2001年『推理作家の出来るまで』で日本推理作家協会賞を受賞。2002年、日本ミステリー文学大賞を受賞
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968年、神奈川県生まれ。SF・ミステリ評論家、アンソロジスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Inzaghico (Etsuko Oshita)
6
昭和の悪女ってこんなだったなあ、という例がずらり。いたいけで守ってあげたくなるような若い女性が実は美人局と組んでたり、なかなか男性運に恵まれない女性がひょんなことで男性を手玉にとるようになったり……女性は「か弱き存在」というのが大前提の時代だからだったこそ、生きた設定だ。「ヒモ」の男性も、昭和じゃないとここまで輪郭がくっきりと描けなかっただろうな(類型的とも言えるけれど、こういうダメ男は魅力があるのよね)。2021/05/25
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3
悪女に焦点をあてたサスペンスという定義がもうすでに安っぽくて古臭いんだけど、それに加えてブラジァ、スウェーター、ジヨオカアと、昔ながらの言葉遣い、胸のなかでつぶやいているはずなのに話し言葉を括弧で使う表記、シリアスな雰囲気であるはずなのにややコメディタッチで結末のあっさり具合になんだかな。好きなのをしいて言えば手袋のうらも手袋だけど、期待していたより楽しめなかった。日下三蔵編に外れはないと思っているからなんとなく肩透かし。第二弾も買っちゃったのに。2021/09/19
ヒサ子。
3
期待してたより、ずっと面白かった!! 『妖精悪女解剖図』したたかな女は、悪女にもみえるのね。なかなか思惑通りいかないので、結末が予測不能。昭和のサスペンスだけど、ろくでもないヒモ男とズルズル同棲してしまったり、事件をキッカケに男を手玉に取ることを覚えてしまったりとか、令和でもじゅうぶん面白い。 『犯罪見本市』ユーモアあふれるクライムサスペンス劇場といったところ。小気味よくて、人情あふれてほろ苦さもありの、二転三転する短編が2作。 都筑道夫は初めて読んだけど、鬼才というのも納得です。2021/05/26
糸くず
1
短篇集『妖精悪女解剖図』と、四つの中篇を収めた『犯罪見本市』の前半二篇の構成。『妖精悪女解剖図』では、「手袋のうらも手袋」「鏡の中の悪女」がいい。前者は、自信のなさゆえに好意を抱いていた男性を犯罪者に仕立ててしまう女性の悲劇で、「待つ女」から変貌をとげていく彼女の心理が哀しい。後者は、誘拐事件をきっかけに妻の出生の秘密を知っていく男を描いたサスペンス。スリル満点の二転三転する展開もいいが、事件が終わっても付きまとう暗い影を描いた不穏なラストが素晴らしい。 2021/08/27
てまり
1
角川文庫版はもともと持ってる。やはり「手袋のうらも手袋」がよい。昭和のスリラーだと女性は魔性や恋心がフォーカスされがちだけど、これは自尊心からの行動、それから自己肯定への材料としての愛情を求める姿が書いてある。ストーリー的には最後の二編が好き。勢いで二転三転する明るいアクション物、哀愁もある。2021/06/09