出版社内容情報
探偵小説の牙城として多くの作家を輩出した伝説の総合娯楽雑誌『新青年』。創刊から101年を迎え新たな視点で各時代の名作を集めたアンソロジー。
内容説明
探偵小説の牙城として江戸川乱歩をはじめ多くの作家を輩出した伝説の雑誌『新青年』。創刊100年、終刊70年という時間を隔て、雑誌が生きた時代の営みが意味深く見えてくる。本書は年代別に5つの章で構成、探偵小説の定番に限らず、現代的観点からの魅力を踏まえ、評論や編集後記、戦中戦後の諸作品も多数収録し、各章、各作品には解説を附す。新たな視座で編まれた『新青年』傑作集の誕生。
目次
1章 探偵小説壇の成立
2章 花開くモダニズム
3章 探偵小説の新展開
4章 戦時のロマンティシズム
5章 新時代の夢
補章 『新青年』ナビ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
柊渚
27
江戸川乱歩や横溝正史、夢野久作らがデビューを果たした伝説の雑誌『新青年』。探偵小説やSF・怪奇小説など、当時の若者達を夢中にさせた、娯楽性に富んだ作品の数々。読者を楽しませたい…とにかくそんな気持ちが伝わってくるので、面白くないわけがなかった🥺 目次に海野十三(別名義でしたが)の名前を見つけ、興奮を抑えられず。この方の『蠅男』好きなんです…笑。収録されている作品は、この本を手に取らなければ、おそらく読む機会がなかったと思われるものばかり。お気に入りは渡辺啓介の『地獄横町』や摂津茂和の『祖国は炎えてあり』2021/10/20
Aminadab
20
乱歩読者ならお馴染み1920~50年刊行の若者向け総合雑誌。甲賀三郎・浜尾四郎・渡辺啓助など1人1篇、他では読めない作を中心に26篇収録。戦前の探偵小説は作者の理系率がすごく高いのが面白い。乱歩沈黙後、戦時下の国策に沿った作にも一定の評価を与えているのがこの集の特徴で、小栗虫太郎からは陸軍報道班員として行かされたマレー半島コタバルに取材した作を取る。読み応えあった。戦後は巻末の鈴木徹男が珍品。栃木県の農村で実際に物乞いをした経験を記す。しかし小説として抜群に旨いのはやっぱり山本周五郎。これは動かしがたい。2021/05/16
Inzaghico (Etsuko Oshita)
11
懐かしいルビや仮名遣い、紋切り型だけど妙に魅力的な登場人物の面々、あり得ないシチュエーション。これぞザ・娯楽。1940年に大下宇陀児が茂井田武の絵からストーリーを作成せよというお題を出し、それを久生十蘭、石黒敬七、橘外男の三人がそれぞれ応じて話をつくった「奇妙な佳人」は、三人の個性が出ている。とくに石黒敬七の「男はお財布」と思っている「佳人」と、彼女の要望に応えきれるかどうか肝を冷やしている男のやりとりと最後のオチ(笑)。2021/04/23
コノヒト
0
大衆娯楽雑誌なら、誌面に世相が反映されるのはなおさらのこと。各章末の編集後記にあたる記事にも如実に表れている。戦時中に掲載された作品群を読めば、当時の大衆読者のニーズの一端を窺うことができて面白い。『新青年』といえば探偵小説だから、かえって純粋な探偵小説ではない作品が印象に残った。『聖汗山の悲歌』(1940年)や『放浪の歌』(1950年)が。2023/11/24