出版社内容情報
昭和の名人から談志、志ん朝、また、現役トップの演者は「古典落語」の演目をどう演じてきたか。画期的落語論待望の文庫化。追加三演目を書下ろし。
内容説明
同じ「芝浜」は一つとしてない。志ん生、文楽、圓生ら昭和の名人から、志ん朝、談志、さらには小三治、談春、一之輔など現役トップの落語家まで、彼らは「古典落語」の代表的演目を分析し、アレンジを加え、ときに解体もしながら、どう演じてきたのか。演目の進化から落語の“本質”に迫る、画期的落語評論。文庫化にあたり、「死神」「居残り佐平次」「子別れ」についての書き下ろしを増補。
目次
第1章 芝浜(耳で聴く文学作品―三木助;ドラマティックな感情の注入―談志 ほか)
第2章 富久(愛すべき幇間―文楽;効果的な第三者目線―志ん生 ほか)
第3章 紺屋高尾と幾代餅(瓶のぞきの後日談―圓生;ロマンティックな恋―談志 ほか)
第4章 文七元結(テキストとしての速記―圓朝;演劇的リアリズムの誕生―圓生 ほか)
著者等紹介
広瀬和生[ヒロセカズオ]
1960年、埼玉県生まれ。東京大学工学部卒。ヘヴィメタル専門誌「BURRN!」編集長、落語評論家。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日、生の高座に接し、自ら落語会のプロデュースも手掛ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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浅香山三郎
7
広瀬さんの落語の聴き方は、ポッドキャストの番組やメディアでの評論で承知してゐたが、まとまつた本の形で接するのは、初めてであつた。古典落語の芝浜・富久・紺屋高尾と幾代餅・文七元結の四つの演目を素材に、演じ手の噺家たちの演出、工夫のポイントを論じる。同じ噺の演じ方が、演者や時代によつて変はることを寄席の客として、また厖大な音源の聴き込みをもとに比較し、それぞれの噺の魅力を語る。同じ演者でも噺がどんどん変化してゆくさまも面白い。古典落語が演者によつて自分の了見との兼ね合ひで納得のいく形に整へられ、かやうにも↓2024/04/19
やまねっと
6
この本は落語初心者に読ませてみても途端に落語ファンになるだろう本になると思う。 単行本でも読んでいたが、文庫になっての巻末の演目解説も参考になる。昭和の名人、現在の演者との比較はとても参考になった。自分で現在を入れ込むのは伝統芸能にとっての最大の見せ所の一つと言えよう。 私は紺屋高尾より幾代餅の方が好きだ。これらの演目の比較と考察は鋭いものがあると思った。 2021/03/23
qoop
4
同じ噺を落語家たちはどう解釈し、演じているかを比較した演目紹介。演目の上位に落語家を置く著者ならではの構成で、演者たちの口舌を耳に蘇らせながら脳内で聴き比べができるのが面白い。「古典落語」進化論という副題だが、江戸や明治という背景を描きつつ、そこに依らない現代的な情緒性を派手で華やかに演じる変化を進化と呼ぶのはまさしく字義通り、時代との即応性ということだろう。単純に個人の嗜好/良し悪しの判断や好き嫌いでないことがよく分かる。2021/03/22
Kazuo Ebihara
3
落語は、同じ演目でも落語家によって演じ方が変わります。 著者は、古典落語の代表的演目であ芝浜、富久、紺屋高尾、幾代餅、文七元結の五編について分析。 志ん生、圓生らの昭和の名人、 志ん朝、談志、小三治らの平成の名人、 談春、喬太郎、一之輔らの現役トップたちが 如何にテーマを掘り下げ、どのように演じたかを詳しく解説しています。 落語は、録音や録画された膨大な資料が残されていますから、このような研究もさらに進むでしょうね。 まあ、私たちは、好きな落語家を何人か見つけて、楽に聴けば良いと思いますが。 2023/01/20
オールド・ボリシェビク
2
「芝浜」「富久」「紺屋高尾(幾代餅)」「文七元結」といく四つのネタを、名人たちはいかに語ってきたか。そして中堅ははいかに新たな切り口を開いてきたか。それぞれの演目の細部を丹念に辿る。よくまあ、これだけ、落語を聞いているもんだよ。2021/03/07
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