出版社内容情報
いまも人々に読み継がれている向田邦子。その随筆の中から、家族、食、犬と猫、こだわりの品、旅、仕事、私…、といったテーマで選ぶ。解説 角田光代
内容説明
お人好しと意地悪、頑固と機転…人間の面白さを描いた名エッセイ。家族、食、旅など、テーマ別に50篇を精選。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
151
向田邦子さんといえば『思い出トランプ』や『男どき女どき』といった小説が有名で私も何度も再読した。そしてエッセイも抜群に上手い方で難しい表現なしに家族や旅、食、そして自分のことのことを書いている。このエッセイ集では父親のこと、飼っていた犬の話が特に気に入った。犬の話ではホロリとさせられた。昭和時代の後半に亡くなられたがもし平成や令和の日本をどんな風に切り取るのかなあ。気になったのがこだわりの品という章のこだわりという言葉。この言葉をいい意味として向田さんは絶対に使わなかったと思う。図書館本 2021/07/10
trazom
143
向田さんは殆ど読んでいる積りだが、ちくま文庫から「向田邦子ベスト・エッセイ」という新刊が出ているのを見て、思わず買ってしまった。没後39年。楽しい再読だった。向田さんの写真を見ると、目ぢからの強さに圧倒される。その鋭い観察眼で、人の心を射抜いてしまう。乾いた文章だからこそ、優しさや哀しさが、余計に心に沁みる。「ゆでたまご」のような名エッセイが収録されていないのは残念だが、このエッセイ集の選者は、あの「字のない葉書」の末妹・和子さんなんだから、文句は言えまい。この本の最後が「手袋をさがす」なのは流石だ。2020/04/20
KAZOO
136
最近向田さんのエッセイが評判のようで私も何十年ぶりかで手に取ってみました。向田さんの妹さんがいくつかの本から抜粋されて編集されたようです。読んでいて昔の懐かしさとほっとした感じを受けました。時間の動きもゆったりした感じです。ときにはこのような本を読むのもいいと思いました。2021/10/09
ちゃちゃ
123
私にとって向田邦子は憧れの人だ。ユーモアとペーソスを織り交ぜた軽やかな文章。日常のささやかな出来事を、気の利いた酒の肴でも作るように、絶妙なさじ加減でクスリと笑ってホロリと泣かせ、しみじみと頷かせるエッセイの妙味。まさに昭和の名エッセイストである。本作は、没後40年を機に末妹の和子さんによって編まれたエッセイ集。とりわけ印象に残ったのは本作の最後を飾る『手袋をさがす』だ。自らの感性に嘘をつかず、“人生のお気に入りの手袋”を探し続けた彼女。飽くなき探究心や心意気といった生きざまそのものも、カッコイイのだ。2021/10/04
ゆきち
88
向田さんの没後40年の特集テレビを見て、ひとり向田邦子まつりをしています。テレビを観ていても、魅力的な女性だなと思いましたが、本エッセイ集を読んでいても、それを感じずにはいられません。最後の『手袋をさがす』で、『そして〜私は決めたのです。反省するのをやめにしよう〜と。』気に入らない手袋を寒さのためにするよりも、手が寒さで霜焼けになってもカサカサになってもしない。気に入る手袋が見つかるまで、手袋なしですごす。そんな生き方をすると決めた向田さんに惚れました。わたしはそれがなかなかできない。だからこそ憧れます。2022/09/11