出版社内容情報
戦後皇籍を離脱した「旧皇族」、消えた11の宮家の源流となる「伏見宮家」とは一体どのような存在だったのか? 皇族問題を考えるには必携の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
48
南北朝時代から戦後の臣籍降下までの伏見宮の歴史を概説した本です。江戸時代までは仏門に入っていた伏見宮の人たちが明治以後、男性は軍人への道しかなくなることで悲喜こもごもの歴史が綴られていきます。宮中某重大事件の真相が通説とは異なっているというのは興味深く感じました。皇族の人数は、戦前は多すぎることで様々な問題がありましたが、今後は明らかに少なすぎる状態になっていきます。女性天皇や女系天皇を論じたり、「旧宮家」を復活させるかどうかの議論をする前に伏見宮の歴史を知っておくことは大切なことだと思います。 2020/05/11
鐵太郎
21
興味深く、面白い歴史でした。「闘う皇族」「皇族と帝国陸海軍」など、皇族に関するいろいろな研究をしている浅見雅男氏の本。伏見宮というのは、戦前の海軍史でいろいろ引っかかりのある名ですが、その宮家を中心にして、昭和22年10月に皇籍離脱(臣籍降下)した11家の成り立ちと人々の歴史を描いたもの。あくまで好奇心に駆られて調べただけだよ、という姿勢でニュートラルに描こうとしていますが、その底からなにか作者の言いたいことが見えると思うのは偏見でしょうか?(笑)2020/06/28
nagoyan
13
優。室町時代に分かれた世襲親王家の伏見宮とその傍系の歴史。伏見宮が成立した契機は南北朝時代。観応の擾乱に際して京都を占領した南朝が北朝の院、天皇、皇太子を吉野に拉致したため、幕府が難を逃れた後光厳を立てたことに始まる。拉致された崇光の系統が後に伏見宮となる。幕末、この伏見系の皇族が還俗するなどして力を持ち、明治天皇の皇統護持への懸念から多数の宮家が敗戦まで残ることとなった。もっとも、明治以降はゴシップ的。あとがき、文庫版あとがきにある著者の主張は説得的。まずは、虚心坦懐に事実を知るべき。2020/04/24
kawasaki
5
2012出版の2020文庫化。全7章で前近代に1章。続く章2つで久邇宮朝彦と山階宮晃を中心に幕末。以後皇籍離脱までの伏見宮系のありようを制度的議論と個性的皇族の逸話で辿る。著者の関心は現在の皇位継承問題で浮上してきた「旧皇族」にあり、伏見宮系が時々の状況や政治判断の中で皇族としての地位を確立していく様を描く。「とにかく無条件に偉い」というわけではなかった人々の処遇と「皇位継承の安定」の天秤。著者の他書とも重なるのだが、若き日の朝彦を奈良奉行時代の川路聖謨の日記から描き出すなど、ダブらない工夫。2020/05/22
ミカド
2
世襲親王家である伏見宮家について、成立より皇籍離脱までの流れを特に幕末以降の活躍に焦点を当てて説明している。世襲親王家としては最も古く、南北朝時代まで遡ることができるのは感嘆せざるを得ないが、なによりすごいのが幕末以降に復権し明治、大正、昭和と政治、軍事に大きく関わるようになるという事である。しかも、戦後臣籍にくだった後、今また、皇族減少によって旧宮家(伏見宮)を復活させようという話題もあるのだから、今後も目を離すことはできない。2020/07/04
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