内容説明
人間ってドジねえ―。あたたかなまなざしと抜群の知性を武器として、専門領域の数学にとどまらず、独自の教育論・人生論を展開し老若男女の心をつかんだ京都大学名誉教授の森毅。自由な発想とその論の鋭さから「一刀斎」と称される彼がのこした膨大な数の著作より、長年の盟友・ドイツ文学者の池内紀が珠玉のエッセイを精選した。しなやかでやわらかく、毎日を生きるのがきっと楽になる一冊。
目次
第1章 ドジ人間のために(ドジ人間のために;ぼくら、非国民少年 ほか)
第2章 楽しまなくっちゃ損(楽しまなくっちゃ損;機械について ほか)
第3章 ときには孤独の気分で(ときには孤独の気分で;ものを書く場所 ほか)
第4章 未来は誰のものでもない(未来は誰のものでもない;人生の空白 ほか)
著者等紹介
森毅[モリツヨシ]
1928年東京生まれ。数学者。東京大学数学科を卒業。京都大学教養部で教鞭を執り、民間の数学教育運動にも参画した。京都大学名誉教授。2010年7月逝去
池内紀[イケウチオサム]
1940年兵庫県姫路市生まれ。ドイツ文学者、エッセイスト、アンソロジスト。カフカ、ゲーテ等の翻訳を多数手掛ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
98
数学というだけでアレルギーが起きる。何がなんだかわからない。そんな数学の教鞭をとっていた森毅氏のエッセイ集。数学者の書くエッセイだから数学のことがびっしりと書かれているのかと思いきや内容はいたって人間臭いものばかり。教育論や人生論、勉強法や読書法どれもわかりやすく書かれていた。特に読書法の記述では氏は快食快便読書術として紹介している。頭の中に残そうとする読書は頭の中が便秘になるそうだ。大いに同感。無駄が一番大事だと思う。全く関係ないことがいろいろな思いつきに影響する、この言葉は大切にしたい。図書館本2020/05/02
Aminadab
24
森毅(つよし, 1928-2010)は数学者・京大教授。『まちがったっていいじゃないか』(1981、ちくま文庫1988)など、教育/学習について柔軟な考え方をするよう若者に説くエッセイがよく読まれた。本書は没後9年で編まれた選集。若者へのお説教はもちろん秀逸。敗戦のとき「とくにあほらしかったのは『政府にだまされた』などと大道で『女房を寝とられた』と喚くみたいな連中」(330頁)。好!。しかしこの編集だとちょっと繰り返しが多いか。一番刺さったのは人物論(湯川秀樹・岡潔・遠山啓)。あと三島由紀夫愛読歴の告白。2022/03/23
やまねっと
15
脱力系のエッセイ。気を抜いて読んでると生真面目な人には結構手厳しい記述があったりする。大学以来久々に森毅を読んだ。 老婆心で書いてるのか世の中不真面目に生きていても良いのだと、押さえるところを押さえておけば案外うまくいくことなど、疑問に思いつつ妙に納得してしまったのでこの老人の時に書いたものは一つの指針としても良いなと思った。 戦争についても一定の価値観を持っていて経験してきた人は違うなと一目置いた。 ただしょうもない小説みたいなのも載ってるので、そこはページ稼ぎかと突っ込んでしまった。2024/05/16
元よしだ
5
印象に残ったところは 『微積分を理解しただけでは心細いので てごろな三次関数ぐらいで、小手調べ ビチッと答えを求める そうして微積分ごっこで楽しんでると 微積分の世界が自分のものになる』2019/11/29
G
2
いったん落ちこぼれたらもう回復できない、そう考えているとしたら、勉強を定期バスのように思っているのではないか。勉強というのは本来、森かげの散道道のようなものだ。暑いので木かげで昼寝する人間もあるかもしれないが、目がさめてから歩きだしたってかまわない。(p34-35)2022/02/04