内容説明
縦社会のくびきから脱せずに、尊大な自尊心をもてあます男たち。傷つくことを恐れて常識や因習から解放されない彼らは、これからどこへ向かうのか?ゴリラ研究で世界をリードする京大総長が、進化学の観点から、男の身体や心に刻印されるオスの特徴を読み解く。霊長類の軌跡をたどることで、息苦しさを感じている現代人のココロを揺さぶり、男と女の幸福な結びつきを考える希望の書。
目次
第1章 人間の男って変だ
第2章 セクシーなオスたち
第3章 同性間の性交渉
第4章 メスと共存するために
第5章 父親の由来
第6章 オスたちの暴力
第7章 オトコの進化、男の未来
著者等紹介
山極寿一[ヤマギワジュイチ]
1952年東京都生まれ。霊長類学・人類学者。ゴリラ研究の世界的権威。京都大学総長。京都大学理学部卒業、京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。理学博士。ゴリラを主たる研究対象にして人類の起源をさぐる。ルワンダ・カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンターのリサーチフェロー、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科助教授を経て同教授。2014年10月から京都大学総長。2017年10月から日本学術会議会長を兼任し、日本の学術界を牽引する存在となっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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SAT(M)
17
(去年、動物園でゴリラに一目惚れして以来、ゴリラブーム到来中!なのは、置いておくとして…)ゴリラなど霊長類の生態から、プリミティブなジェンダーとしての「オトコ」を読み取っていこう、という本。ゴリラのドラミングやニホンザルのヒエラルキーは、無闇な殺し合いを避けるためのものといったように、「自分の遺伝子を残したいが、群れを崩壊させるのはマズイ」という二者の折り合いをつけるための社会的な仕組みを霊長類は持っていて、しかも各々の環境や生態に合わせて多様に変化させているとは…。ああ、オランウータンのように生きたい…2020/01/12
菫子
11
人間の男性の(女性からみたら面倒な)『男らしさ』のルーツはゴリラにあったのだと思うと人間の男性の(面倒くさい)性質のあれこれや社会構造など全てが許せる気がするという意味で女性にとってとても有用な本だと思いました(真面目に)。2020/03/21
すうさん
5
ちくま文庫で読んだ。内容は山極さんの本を何冊も読んでいれば理解できる。霊長類や猿類の研究をしていくと、彼らの社会性に気付く。社会とは集団でありその最小の型は家族。究極ではオスとメスになる。その中でオスの「男らしさ」に悲哀を投げかけた本であるといえる。オスの生き方は「意地」であると思ってしまう。究極のカッコつけなんだ。「~でなくてはならない」のがオス。オスは敵と戦う以前にいつも自分と戦っているような気がする。自分の長所も短所も理解して、したたかに生きているのがメス。やっぱり男は弱く「男らしくない」のだ。2020/01/30
とんかつラバー
4
この本を再販するにあたって作者は女性の方からあまりいい印象を持たれないかも…とあとがきで心配してましたが、科学的根拠のない男脳や女脳の本と違って、研究や観察の元、類人猿類のオスとメスの行動の原理や進化について理論的に説明していて学者らしい内容でした。2020/10/07
読書熊
4
類人猿のオスとの比較から、人間が文化的に構築した男らしさの身体的起源を探っていく。とはいってもゴリラと人間な安易な重ね合わせ、あるいは対比に陥らず、微妙な差異を検証できる冷静な内容。このバランスは山極先生だからこそだと感じた。2019/10/18