内容説明
徒党を組まず、何者にもおもねらず、孤絶と背中あわせの自由を生きる歌手・友川カズキ。詩人、画家、俳優、競輪愛好家の顔ももつ。その狂気と諧謔に満ちた独特の表現は、自他への怒り、故郷への追憶と悔恨、酒を介した友との交流、それらの蓄積から生み出される。「血だらけの魂を剥き出しにして生き抜いてきた」男の新旧の随筆と詩篇を精選採録。
目次
向って来る人には向って行く
恩師加藤廣志先生のこと
兎の天敵
春の信号
ボーンと鳴る
たこ八郎さんのこと
たこ八郎が居た
たこ八郎と中原中也
寂滅
覚〔ほか〕
著者等紹介
友川カズキ[トモカワカズキ]
1950年秋田県生まれ。能代工業高校時代はバスケットボールに明け暮れ、卒業後に集団就職で上京。土方として飯場を転々としながら詩作に没頭。1974年にレコードデビューし、現在まで計30作を超える作品を発表。今なお精力的にライブ活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
36
「一人盆踊り」という言葉が喚起するものがずしんと来る。大好きなたこ八郎の話、中上健次との交流。後半の私が私には、ホラー小説のようで、怖かったなぁ。競輪番組に出た影響の話が面白かったなぁ。2019/06/13
阿部義彦
21
ちくま文庫オリジナル。フォーク歌手の友川カズキさんの過去のエッセイめいた文章と歌詞を再録して新たに編集したそうです。折に触れては肉体労働で稼ぎ、その合間に、音楽と趣味の絵画を嗜んでいます。デッサンに関することや美術館にまつわるあれこれ、趣味の領域を超えて博学ですね。読み応えがあります。またコンサートでは海外での反響がまた赤裸々に綴られています。日本の聴衆との比較が素晴らしく本質をついてます。つまり、「たった一人になれる」人たち。個人であることを怖がっていないの。それぞれがリスクを背負ってその場にいるの。2019/11/21
チェアー
17
哀しさとなにやってるんだろうというため息とが入り混じったエッセイと詩。呑んで呑んでずっと深いところに行って、そこで人とふれあい、確認し、水面上に浮かび上がってくる。そんな毎日。中上健次、たこ八郎、大島渚の話もいい。中上と森敦の家に行って全然盛り上がらなかった話、弟の自殺の話。力を入れようにも、どう入れたらいいのかわからない、力を入れてもおれなんか、という脱力感。 2019/09/10
imagine
13
無頼や破天荒といった言葉では足りないほど、人生の振り幅が凄い。日雇労働の日々、弟の死といった辛い出来事と、たこ八郎や中上健次との交流、歌手や画家としての活動。これらすべてを並行して生きてゆくという奇跡。しかも効率や打算とは無縁、疾走感もまるで感じない、本能剥き出しの人生。冒頭の「向かってくる人には向かってゆく」という生き様は、最終章での語りおろし、海外ツアー体験記に行き着く。「陰」から「陽」に着地する本の構成が見事だし、ミディアムレアのエピソードには爆笑。グローバル化した世界、著者の今後に益々注目したい。2019/09/05
mawaji
12
故郷の先輩の文庫本、高田馬場芳林堂店頭で購入。噂に聞いていた戦メリ主役オファーの話はボツになった理由も含めてやはり本当だったのだ。中上健次と森敦宅へ押しかける有様は太宰治「津軽」の蟹田のSさんを彷彿とさせる感じがしました。中原中也は「一人でカーニバルをやってた男」ですが友川先輩は世界を股にかけて「一人盆踊り」をしているのですね。「聴いてる方も表現者だ」っていう言葉、印象深く思いました。中学生の頃に放課後の教室でバスケ部のコーチとして部員たちとボールを指先でゴシゴシこすって磨いていた姿を思い出しながら読了。2019/07/15