出版社内容情報
暗号法に取り組んでいた伯父の死をきっかけに、ヒロインの周囲で不可解な出来事が次々と起こる。マクロイ円熟期の暗号ミステリ。解説 山崎まどか
ヘレン・マクロイ[マクロイ,ヘレン]
著・文・その他
渕上 痩平[フチガミ ソウヘイ]
翻訳
内容説明
深夜、電話の音でアリスンは目が覚めた。それは伯父フェリックスの急死を知らせる内線電話だった。死因は心臓発作とされたが、翌朝訪れた陸軍情報部の大佐は、伯父が軍のために戦地用暗号を開発していたと言う。その後、人里離れた山中のコテージで一人暮しを始めたアリスンの周囲で次々に怪しい出来事が…。暗号の謎とサスペンスが融合したマクロイ円熟期の傑作。
著者等紹介
マクロイ,ヘレン[マクロイ,ヘレン] [McCloy,Helen]
アメリカのミステリ作家。1904年ニューヨーク生まれ。ソルボンヌ大学に留学、パリとロンドンで美術批評家、新聞記者として活動し、1932年に帰国。精神科医ウィリング博士を探偵役とした『死の舞踏』(1938)でデビュー。1994年没
渕上痩平[フチガミソウヘイ]
元外務省職員。海外ミステリ研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
184
★★★☆☆ マクロイの暗号ミステリ。 読みやすいが、肝心の暗号が難解すぎて最後のカタルシスは皆無だった。本当は「あの時の伏線はこう繋がってたのか!」となるところなんだけどね…そもそも暗号の素人がそんな簡単に見破れるものなの? あと犯人の驚きが全くないのも痛い。 しかし物語の鍵となる『牧神』を効果的に用いて、サスペンスを盛り上げる手法は良かったので、マクロイの他の作品が気に入った人なら一読の価値はある。2020/11/20
ケロリーヌ@ベルばら同盟
42
熱帯夜の澱んだ闇を貫く電話のベルから始まるサスペンス。叔父であり、雇用主である老学者の急死により、ヒロイン・アリスンは、軍部から叔父の秘密の一面を知らされる。疑惑と陰謀の影に追われるように、静養の為訪れた人里離れた山中のコテージにも、不穏な気配が纏わりつく。いる筈のない他者の息遣い、獣の足跡、正体不明の隣人…。ヒロインの言動もどこか不安定だ。叔父が開発したとされる軍事用暗号の謎、ギリシア神話の半獣の神。自然の厳しくも美しい情景描写。混沌としたストーリーの果てに回収される伏線の配置が見事。初読の作家を堪能。2018/12/08
星落秋風五丈原
39
全体像ではないけれど、表紙絵に映っているのは牧神=パンで、Panic(原題)の語源でもある。そして同時に、Panとはギリシア語で「全て」を意味する。舞台となる山荘には牧神の像があり、文字通り全てを見ていた目撃者と言えるだろう。何の能力も持たず組織に属してもいなかったヒロインが、渦中の人物の近くにいたばかりに、今度は自分自身がその渦に巻き込まれてしまう「巻き込まれ型」ミステリ。かなりのページ数が暗号解読に割かれているが、それ以外の部分を読めば、犯人は比較的分かりやすい。2018/07/11
コーデ21
33
<マクロイ円熟期の暗号ミステリ>マクロイ13冊目。暗号部分が難解で何度も挫折しかけたため、途中で暗号関連はすっ飛ばし(コラコラ) ゴシックロマン風の自然描写の巧みさと辺鄙な山中での特異な体験が際立って、これまで読んだマクロイワールドとは異質な読み心地で楽しめました。ただし殺人事件の謎解き自体は少々肩すかしかも^^ 2022/06/18
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
31
牧神とは足がヤギか羊のひずめでできた、音楽や恐怖を司る半人半獣の神のことである。死んだ伯父の暗号を受け取ってしまったらしいアリスンは、ひとりで住む山奥のコテージで、不可解な現象に悩まされる。これは牧神なのか、あるいは誰かが彼女の命を狙っているのか…?少ない登場人物は皆、何を考えているのかわからない信用できない人に見える。暗い森で響く不可解な音。突然いなくなる人。緊張感みちみちのホラーに近いミステリーである。2018/07/28
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- 和書
- 四月ばーか 講談社文庫