出版社内容情報
大学生の龍馬と友人のサキ子は互いの夢を叶えるためにひょんなことからバナナの輸入でお金儲けをする。しかし事態は思わぬ方向へ……。解説 鵜飼哲夫
内容説明
お金持ちの台湾華僑の息子、龍馬は車が欲しい大学生、そのガールフレンド、サキ子はシャンソン歌手としてデビューしたいが、青果仲買人の父の許しが得られない。そんな二人の夢を叶えるのはバナナ?ひょんなことからバナナの輸入で金儲けをすることになったのだが、そこへ周囲の思惑が絡み、物語は意外な方向へ!テンポの良い展開に目が離せないドタバタ青春物語。
著者等紹介
獅子文六[シシブンロク]
1893‐1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。一方、庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。日本芸術院賞受賞、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
74
バナナがまだ自由に輸入出来なかった時代の話。叔父が持つバナナの輸入ライセンスを借り受けた龍馬は車を買いたいだけなのに、大人のたちの欲が彼を縛りつけていく。バナナをめぐる悲喜こもごも。ドタバタ青春物語。昭和34年に書かれたというのに、現代でも十分楽しめる話だ。2020/09/25
ヨーイチ
45
1958・新聞連載。正しく生まれた頃の小説。本作もノンストップコメディで折々の戦後風俗への眼差しと深い洞察を秘めた文化に対する所見を楽しみ、学ぶことが出来る。主なお題はバナナ輸入を通した大陸と台湾華僑のアイデンティティ、当時のシャンソン界隈、もう一つは美食。高校時代の美術の先生がよく「美術は一代、音楽二代、舌三代」って話をしていて(出典が未だに確認できないでいる)味覚の鍛錬?はそれ程時間が掛かるって認識を何となく信じて来たのを、文六先生の美食家描写でふと思い出した。続く2017/09/27
ユメ
39
獅子文六らしく、ドタバタとコミカルな青春群像劇。車を買うお金が欲しい大学生の龍馬と、そのガールフレンドでシャンソン歌手を目指すサキ子の二人が、ひょんなことからバナナの輸入事業を始めることになったからさあ大変。著者がエッセイに「バナナという果物の持つ滑稽さを小説にしたかった」という旨を書いているのを読んだが、バナナに群がる人々の欲がもつれるこの小説は、その言葉を見事に実行している。己のグウルマンぶりを存分に発揮して盛りこんだ、和洋中の美食の描写も垂涎ものだ。今読んでも古びない獅子文六の魅力に夢中である。2017/10/29
みつ
23
1959年発表の小説。バナナがまだ高嶺の花だった頃とおぼしき時代、台湾人の父を持ち空手の遣い手にして自動車好きの龍馬とシャンソン歌手志望のサキ子を中心に、親の世代も交え、バナナ貿易とシャンソンの世界が描かれる。若い2人は恋人同士であるがサッパリとした関係で、とりわけ利発で積極的なサキ子の変貌ぶりが楽しい。龍馬の父天童は、美食家であるとともにバーの女性とも親しいが、それでいて愛妻家で息子思い。「台湾側でも大陸側でもない。いわば海の上に浮かんでいる中国人」と言い切る。大人(たいじん)の風格を湛え魅力的。➡️2022/05/12
ブーボ
14
時間が掛かってしまった。文六読みすぎて、少し飽きてしまったから。でも最後まで読むと、ドタバタでやっぱり面白い。 バナナをめぐる台湾と日本人のハーフの青年とそれを取り巻く人たちのはなし。2018/02/15