出版社内容情報
すべてに見放されたサイテーな毎日。その一瞬の狂った輝きを切り取る、伝説的カルト作家の愛と笑いと哀しみに満ちた異色短篇集。解説 戌井昭人
内容説明
なぜか酔いどれの私が付添人を務めることになった結婚式のめちゃくちゃな顛末(「禅式結婚式」)。残業だらけの工場を辞め、編集者として再出発した男がやらかした失敗の数々(「馬鹿なキリストども」)。何もかもに見放された空っぽでサイテーな毎日。その一瞬の狂った輝きを切り取った34の物語。伝説的カルト作家による愛と狂気と哀しみに満ちた異色短篇集。
著者等紹介
ブコウスキー,チャールズ[ブコウスキー,チャールズ] [Bukowski,Charles]
1920‐94年。ドイツ生まれ。3歳でアメリカに移住。LAシティ・カレッジ中退ののちアメリカ各地を放浪し、24歳で最初の小説を発表する。その後は郵便局に勤務しつつ創作活動を続ける。現在までに100冊に及ぶ著作が刊行されている
青野聰[アオノソウ]
1943年、東京生まれ。早稲田大学中退。作家。1979年『愚者の夜』で芥川賞受賞。『女からの声』で野間文芸新人賞、『人間のいとなみ』で芸術選奨文部大臣賞、『母よ』で読売文学賞を受賞する。2008年、紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
135
「競馬に行くならそろそろだが、どういうわけかもうどうでもよくなってしまった。私は足もとに捨てた煙草を見つめた。赤い光が見つめ返した。雨がその火を消した。私はバーを探して歩き出した」(女たちの雨) 180cm100㌔の呑んだくれ。飲んで吐いて、セックスして、競馬に行く。この男がそんなことについて書く短編はどれも、美しい詩から出来ている。世界の名作はどんどん読ませるが、汚い言葉や普通の単語が集まる美しい詩で成る文章は、味わって噛みしめて胸にそっとしまいたくなるから、時に本を閉じてふぅっと息をする(続く)2019/06/28
優希
42
面白かったです。いい意味で人間臭い短編集でした。全てに見捨てられ、空っぽの毎日に見せる狂った瞬間が見せる輝きは哀しみに満ちているように思えます。この異色にハマりました。2023/10/25
hanchyan@つまりはそういうことだ
36
♪女とみた〜ら〜すぐに誘い出す〜♪ →んで、逮捕。服役の思い出を語り「また戻ってこよう」と結ぶ。朝がくれば吐き、昼は日雇労働でクタクタ、夜がくればまた飲む。休日は競馬。社会を厭い、同時代の名のある作家や詩人を、4レターワード乱れ打ちで極めて口汚く罵り(ヘミングウェイは除く)、稀に舞い込む文筆家としての破格のオファーも酒でフイにする。んで、朝吐く。……と、まあ、本書に収められた34の掌編・短編、語り手はどれもそんな感じ。何もせず、何処へも行かない。え。そんな本読んでどうなのって?ものっすごい面白かった〜!!2021/06/11
たまきら
24
備忘録)ブコウスキーを読んでいると、人間の一線って何だろうと思う。越えるとやばい線。でも、結構越えて行っても意外と問題無い線。そして、越すことで犯罪者となる線。犯罪者でも戻ってこれる線。そんな自分の思いも、この男の小汚くもまっすぐな言葉は越えていくんだよなあ。2020/12/11
sabosashi
18
ふたつのキーワードは反骨と良識、という相矛盾する二項だろうか。社会はいかなるときも個人を呑み込もうとする。目覚めた個人はそれにあがらわなければならないとされる。だがそれはえてして自堕落へと傾く怖れもありえる。すべてはその兼ね合いなのか。良識とはすべからく操作された良識なのか。他の作品は気に入ったのだがこの作品にはあまり魅せられなかった、残念ながら。詩作品のほうがより純粋なのだろうか。もちろん全否定するわけではなく、味のあるところをみせてくれはする。でもわたしの欲する水準とはやや異なっていたような気がする2024/09/03