出版社内容情報
「赤線」の第一人者が全国各地に残る赤線・遊郭跡を訪ね、現在の色町とそこに集まる女性たちを取材。文庫化に際して「2015年の赤線跡」を増補。
内容説明
戦後間もない昭和21年に定められ、かつて日本のいたるところにあった「赤線」は昭和33年に廃止された。ところが地域によっては様々な風俗産業の業態に姿を変えながら、現在に至るまで賑わいを続けている。全国各地の元赤線地帯を訪ね、風俗産業の栄枯盛衰と、そこで働く女性たちの声を書きとめることで「赤線後の色町」を浮かび上がらせた貴重な記録。新取材の書き下ろしと未発表写真多数収録。
目次
旭川―稲荷小路と中島遊郭跡
釧路―カモメが舞う米町遊郭跡へ
帯広―飲み屋小路の女性街跡
札幌・月寒―ツキサップの夜は更けて
札幌・南六条東三丁目―「屋台団地」の幻影を求めて
苫小牧―煙突と犬と遊郭跡と
函館―土煙の舞う「五百円街」
青森―トンネルの向こうの旧遊郭
秋田―秋田美人の棲む町
盛岡―「八幡町」を訪ねて色町徘徊〔ほか〕
著者等紹介
木村聡[キムラサトシ]
1956年茨城県大洗町生まれ。早稲田大学第一文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
61
著者の作品では、自由国民社から出版された「赤線後を歩く」を読んだことがあります。私の生まれ育った町にも赤線がありました。子供の目にも、その跡地は独特の景色だったと記憶しています。残念なことに、子供には、あの町が放つ空気までは感じることはできませんでした。文学とも切り離すことができない、赤線。今は新しく形を変えて風俗産業となっているようですが。それには情緒を感じません。2020/12/13
山田太郎
50
昔の知り合いと漢字は違うが同じ名前の作者で6浪して医学部行けなかったやつを思い出す。なんかこういう風俗モノのやらしくないやつ好きだな、久しぶりに行きたくなったな、いったことないけど、うそつけ。2016/09/26
ホークス
26
珍しいことではないが、小さな色町の一角に6才迄住んでいた。キャバレーの兄ちゃんがどぶネズミを退治していた事を覚えている。そのうらぶれた街は、世の中が建て前や理屈で出来ていない事の象徴として、記憶の底にある。本書は誰にでも向く本ではない。露骨な底辺世界の描写や、著者の「取材」を嫌悪する方も多いだろう。はっきり言って許容できる人の方が少ない筈だ。でも、場末ばかりを流れ歩く著者のどこか侘しげな語りは、自分には懐かしく感じられた。2016/12/05
ももたろう
24
タイトルに惹かれて読んだ。平成生まれの私にはイメージできないが、一つの時代を築いた昭和のネオン街が時代とともに消えゆくもの悲しさに、何とも言えぬ魅力を感じる。栄枯盛衰、盛者必衰、諸行無常の悲しみへの魅力と言えば良いのか。欲望が渦巻く赤線街も、この世の道理に従い終末を迎える。姿形を変えて存続こそすれ、一つの時代が次の時代へと移り変わる時の流れの必然性に何とも言えない感慨深いものを感じる。特に赤線街にそういうことを感じるのは、そこが欲望の渦巻く煌びやかな世界だからだろうか。筆者の淡々とした描写も良い。2016/11/07
おいしゃん
19
実に貴重なフィールドワーク記録。書かれた20年前で既に風前の灯といった場所もあり、いまやほとんどの場所や店が姿を消していそう。取材中のコミニケーションの描写にも味があり、やみつきになる。2024/10/23