出版社内容情報
星新一「処刑」、小松左京「戦争はなかった」、水木しげる「こどもの国」、安部公房「闖入者」ほか傑作九作品を収録。解説 真山仁
内容説明
ある日、“正義”はわたしたちに牙をむくかもしれない。あの戦争を体験した先人たちが描く残酷な未来。文庫オリジナル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
47
SF小説は時代を選ばない。昭和30年代から40年代の作品ですが、何れも現在でも通じる主題ばかり。小松左京の「戦争はなかった」は歴史修正主義の行き着くところですね。筒井康隆の「公共伏魔殿」は受信料や政治との距離感等NHKの構造的問題をあけすけにします。水木先生のマンガは、戦争や紛争を引き起こす政治の恐ろしさを描いています。2016/06/18
ざるこ
42
巨匠シリーズ最終巻9篇。3巻目にして一番毒が強い。某テレビ局をおもしろおかしく痛烈批判「公共伏魔殿」水が出るか爆発するかの銀色の玉を持たされ火星へ追放される心臓に悪い「処刑」自分だけが第二次世界大戦の記憶を持つ「戦争はなかった」これは戦争が本当になかったとして今のままの経済成長が実際あっただろうかと考えさせられる。まったく簡単じゃない「カンタン刑」ゴキブリや汚水にまみれ…グロ過ぎてキツイが意表を突いたラストで◎。水木氏があんなに批判的な漫画を描かれてたことに驚き。巨匠たちは遠い昔から未来社会を憂いている。2022/06/02
アマニョッキ
36
まず表紙から好み。メンバーを見て秒で買った。式貴士の有名な「カンタン刑」、初めて読んだがこれはすごい!けっこうなグロシーンにも耐えられると思っていた自分の自信がぐらぐら揺れる描写であった。星新一の「処刑」も素晴らしい。短編映画のよう。安部公房の「闖入者」は戯曲「友達」の元になった作品とあって、相変わらずの恐ろしさ。明日自分に起こってもおかしくない狂気。水木先生の漫画もちょっとした緩衝剤になっている(内容はガチだけど)。全体的に大満足なアンソロジー。でも文庫で1000円は高い!2017/05/24
ぜんこう
27
昭和30年代、40年代に書かれたとは思えない、今読んでも十分にゾッとするし、今の世の中の問題提起にもなっているような短篇集(マンガもあるけど)。 「処刑」星新一、「闖入者」安部公房、「カンタン刑」式貴士・・・このあたりが一番怖かった。「巨匠たちの想像力」というシリーズの2冊目から読んでしまったけど、このシリーズはもっと読んでみたいと思う。2017/07/18
TSUBASA
25
1950年代〜70年代のディストピア短編集。自分以外の同窓生が太平洋戦争のことを覚えていない、小松左京『戦争はなかった』。奇妙な闖入者家族に家を乗っ取られる、安部公房『闖入者』。自分の妄想が現実に起こったように相手が錯覚する能力をもった男が成り上がる、半村良『錯覚屋繁盛記』等収録。上記3作が特に気に入った。ディストピアものの恐ろしい所は読んでいて「こんな世界は嫌だ」と心から思っていても、実は現実の世界はそんな道に突き進んでいる気がする所。今の自分はディストピア化する世界に抗って生きているだろうか。2016/02/21