出版社内容情報
小松左京、星新一、手塚治虫…、昭和のSF作家たちが描いた未来社会。民族紛争・管理社会など、私たちへの警告があった! 解説 斎藤美奈子
内容説明
戦争体験世代の巨匠たちから私たちへの警告。文庫オリジナルシリーズ全3巻予定。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
186
明日、召集令状が届くという。逃げも隠れもできずに姿を消してしまうのか。いつか断ち切らなければ、争いは延々と続くことを知っていながら、起こっている現実。その先に何を求め、何が残るというのか。SFというもう一つの地球で起こる悲哀には耐えられる。人と人は対話することができる。人と人造人間はできなかったが、人とAI、AIとAIはこの現状をどう解くのだろう。悲惨な世界を目の当たりにした時、感情を留めて悲しみや怒りを飲み込むことができるのだろうか。異にする各々が互いに自らを正しいと信じ込むことは不幸だ。平和への課題。2023/10/29
藤月はな(灯れ松明の火)
62
多くが既読。海野十三の「地球要塞」は(執筆当時を反映している為、アメリカ人などの西欧圏に対して辛辣だが)まごう事なき、SFだ。何故なら映画『インターステラ』より、前に「多次元世界からの現実への介入は不可解に見える事がある」事を言及しているのだから。筒井康隆の「東海道戦争」はマスコミによって煽動され、現実化される戦争とそれに物見遊山で行くものの戦争の悲惨さに敵わない衆愚の姿が痛烈だ。特にマスコミの偏った情報操作による戦争の深刻化や事実の覆い隠しは、この社会情勢と被るものがあって苦いものが込み上げてくる。2024/08/23
Aya Murakami
57
名だたる作家さん方が書いたSF短編集。 中でも召集令状という作品がラストも含めて怖かった。 戦後世界に突如赤紙が届くようになり、赤紙が届いた若い男性が行方不明になる。この怪奇現象に対してSF作品らしくパラレルワールドなどの説で解明しようとするが‥。 若い女性が行方不明になる作品は数知れずだが若い男性が行方不明になる作品は少ないので非常に面白い構成だなと思い読み終わりました。ラストは救いがなかったけど‥。2017/08/04
ざるこ
56
シリーズ2作目は戦争。戦中、戦後間もない時を肌で感じた巨匠たちの物語はとても攻撃的に感じる。小説というフィクション世界で明らかな事実を鋭く突いてくる。否応なく送りつけられる召集令状や戦場で負った身体的精神的ダメージ、他国とのパワーバランス、マスコミや為政者たちの情報操作。著者たちからのメッセージがガンガン詰まってそう。既読の「芋虫」は何度読んでも打ちのめされる。登場人物はほぼ2人だけなのに渦巻く感情が多すぎて息苦しい。「ああ祖国よ」に至っては内情暴露という感じで失笑。「ああ」に込められた意味がよくわかる。2021/04/30
おさむ
51
このきな臭い時代にこうした本をまとめるちくま文庫は流石です。1960年代の作品が主ですが、当時はまだ戦争が日本の国民にとって、身近な感覚だったんだなと実感。小松左京、筒井康隆、手塚治虫、江戸川乱歩、辻真先、そして星新一。みな個性的で味のある作品でした。後の巨匠たちの慧眼に改めて驚きます。2016/06/17