出版社内容情報
小松左京、星新一、手塚治虫…、昭和のSF作家たちが描いた未来社会。民族紛争・管理社会など、私たちへの警告があった! 解説 斎藤美奈子
内容説明
戦争体験世代の巨匠たちから私たちへの警告。文庫オリジナルシリーズ全3巻予定。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ🍀
182
明日、召集令状が届くという。逃げも隠れもできずに姿を消してしまうのか。いつか断ち切らなければ、争いは延々と続くことを知っていながら、起こっている現実。その先に何を求め、何が残るというのか。SFというもう一つの地球で起こる悲哀には耐えられる。人と人は対話することができる。人と人造人間はできなかったが、人とAI、AIとAIはこの現状をどう解くのだろう。悲惨な世界を目の当たりにした時、感情を留めて悲しみや怒りを飲み込むことができるのだろうか。異にする各々が互いに自らを正しいと信じ込むことは不幸だ。平和への課題。2023/10/29
ざるこ
55
シリーズ2作目は戦争。戦中、戦後間もない時を肌で感じた巨匠たちの物語はとても攻撃的に感じる。小説というフィクション世界で明らかな事実を鋭く突いてくる。否応なく送りつけられる召集令状や戦場で負った身体的精神的ダメージ、他国とのパワーバランス、マスコミや為政者たちの情報操作。著者たちからのメッセージがガンガン詰まってそう。既読の「芋虫」は何度読んでも打ちのめされる。登場人物はほぼ2人だけなのに渦巻く感情が多すぎて息苦しい。「ああ祖国よ」に至っては内情暴露という感じで失笑。「ああ」に込められた意味がよくわかる。2021/04/30
おさむ
50
このきな臭い時代にこうした本をまとめるちくま文庫は流石です。1960年代の作品が主ですが、当時はまだ戦争が日本の国民にとって、身近な感覚だったんだなと実感。小松左京、筒井康隆、手塚治虫、江戸川乱歩、辻真先、そして星新一。みな個性的で味のある作品でした。後の巨匠たちの慧眼に改めて驚きます。2016/06/17
くさてる
32
戦争をテーマにしたアンソロジー。やはり、小松左京、星新一、筒井康隆の三人の作が良い。この突飛な発想をひとつに包みこんでしまうSFという切り口には、やられたと思う。予言的とかそんな解説は無粋極まりないと思う。発表当時から、これらの作品は予言的で現代を切り取っていて、いまそれを読んでも同じように感じるというだけなのだ。面白かったです。2016/03/09
東京湾
30
「戦争」がテーマの傑作10篇。執筆陣が皆戦争を経験している世代なので、やはり作品に込められた熱量も現代作家とは一線を画すものがあるなと思った。特に印象に残ったのは小松左京「召集令状」筒井康隆「東海道戦争」星新一「ああ祖国よ」の三篇。三大SF作家だからというわけではなく純粋に面白かった。戦争を煽るマスコミやそれに応じる大衆心理、また戦争の恐怖を「忘れる」ことへの警鐘、外交下手の政府や我関せずの国民などの風刺と、毒の効いた傑作揃いだった。乱歩の「芋虫」は伏字無し版を読めたのが嬉しい。虚構と侮れない物語だ。2016/08/15