内容説明
作家・五木寛之が、自分のなかに眠っていた歴史を呼び覚ます。自らが、かつて朝鮮半島から引揚げて帰ってきた博多の地で見たものとは?「不法妊娠」など引揚者の悲話。アジア主義の源流「玄洋社」を生んだ博多・福岡の文化・風土。さらに、第2部では太平洋戦争で県民15万人が犠牲になった沖縄を訪れる。歌い踊り、神と自然と人が一体化する沖縄。そこに見出した「日本の原郷」と未来への展望。
目次
第1部 ここは“往還の地”である(半世紀ぶりに博多港の岸壁に立って;アジアの玄関口として;大陸へのロマンとアジア主義)
第2部 神と人と自然が共生する空間(私と沖縄との関係;風や樹木と共生して暮らす人びと;歌い踊り神と一体化)
著者等紹介
五木寛之[イツキヒロユキ]
1932年(昭和7)福岡県生まれ。朝鮮半島より引き揚げたのち、早稲田大学露文科に学ぶ。編集者、作詞家、ルポライター等を経て、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門』(筑豊編他)で吉川英治文学賞を受賞。81年より一時休筆して龍谷大学に学んだが、のち文壇に復帰。2002年に菊池寛賞を、英語版『TARIKI』が2002年度ブック・オブ・ザ・イヤースピリチュアル部門を、04年には仏教伝道文化賞、09年にはNHK放送文化賞、10年『親鸞』が毎日出版文化賞を受賞し、ベストセラーとなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
46
本巻で旅するのは福岡と沖縄。今までのように文化の深層という方面ではなく、日本と世界の関わりという形で言及されているため今までとは少々趣を異にしているように思える。福岡は玄洋社との関わりについてが特に興味深い。この行を読んでいると夢野久作の独特の文体が思い浮かんできて、そこに潜む独特の暗い情念みたいなものについてつい考えてしまう。沖縄については中国との関係や御嶽については他の本でもよく言及されているけど、芸能についてはあまり聞かないので珍しいかな。南国独特のパトスを思い起こさせる一冊でした。2014/09/04
LUNE MER
12
歴史って何だろう、ということを改めて自問自答してしまうシリーズ。歴史って残されることよりも失われてしまうことの方が圧倒的に多いに違いない。YASHAを読んだ後のせいで、沖縄の話が数割増で心にグイグイくる。2020/06/15
ピンガペンギン
1
もとは「日本人のこころ」という題で出版されていたシリーズの1冊。第1部が福岡、第2部が沖縄を旅しての内容。著者は引揚げした数年間の記憶が飛んでいるという。あまりにも辛い体験だった。その著者にして一番戦争でひどい目にあったのは女性と子供だ、という。(戦士は別として)当時は産めよ増やせよで堕胎禁止だったが、引揚者女性のうち約1割が暴行を受けており多くの大学も協力して、堕胎が行われた。引揚者のうち、特権層はいつの間にかソ連軍が侵攻してくる前に情報を得ていて、南下していたらしい。2022/06/19
マスオ
1
刺激的なシリーズでした。2015/04/05
ゆいぱぱ
1
元々のシリーズ名『日本人のこころ』と、ちくま文庫のシリーズ名『隠された日本』ともにこれにて完結です。今回は、引き揚げて来る港であり引き揚げて行く港でもある博多と、沖縄を日本の原郷と示し未来への展望を記されています。本書ではそれほど強調されてないのですが、どちらも地名の呼び名が二つあるんですね。『博多』と『福岡』、『沖縄』と『琉球』。そしてどちらも海外との交流が盛んであったことも共通している気がします。このシリーズ、是非皆さんにも読んでもらいたい。2014/10/03