出版社内容情報
戦後のどさくさに慌てふためくお人よし犬丸順吉。社長の特命で四国へ身を隠すが、そこは想像もつかない楽園だった。しかし……。
内容説明
臆病で気は小さいが憎めない犬丸順吉は、太平洋戦争直後、戦犯を恐れた社長の密命により四国へ身を隠す任務を与えられる。そこには荒廃した東京にはない豊かな自然があり、地元の名士に食客として厚遇を受けながら夢のような生活が待っていた。個性豊かな住民たちと織りなす笑いあり恋ありのドタバタ生活はどんな結末を迎えるか…。昭和を代表するユーモア小説。
著者等紹介
獅子文六[シシブンロク]
1893‐1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。一方、庶民生活の日常をとらえ、ウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。芸術院賞受賞、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
93
太平洋戦争のキズ痕をユーモラスにとらえた〈てんやわんや〉(当時は流行語なった由)のドタバタ喜劇は最高です。コロナ禍での憂さを晴らすには格好の一冊になりました。基本は真面目にシリアスに描かれていますが、ところどころに散りばめた笑いのネタが顔を出して、盛り上げてくれます。主人公・犬丸順吉を柱に「オヤジ」と親しまれる鬼塚社長、美貌には残念ながら欠けるが天衣無縫キャラで、仕事ができる同僚の花輪兵子…、など脇役陣が個性的で面白い。まさに、戦後の沈みがちな世相に「明るい一石を投じた小説」に納得しました。2021/12/03
いちねんせい
40
獅子文六を読むのはこれで4冊目。そこまでてんやわんやではなかったような気がする読了後。戦後の東京と地方の温度差がまたなんとも言えない。『コーヒーと恋愛』とかの方が個人的には好きだったけど、しかしこの人の本はいつも書き出しがとても面白く、読まずにはいられなくなる。そして終わり方もまた面白かった。今回は読み終わって、なんだそりゃ!と言ってしまった。 2017/06/30
ken_sakura
38
面白い(^_^)新聞小説1948-1949。1950年映画化とのこと。解説によると、著者の敗戦小説三部作の一つ(敗戦小説とはあっけらかんと良い命名(^。^))始まりは昭和20年12月、主人公犬飼順吉が戦犯で捕まる噂のあるボス鬼塚玄三から秘密書類を預かり、東京を離れ愛媛県宇和島に身を寄せる舞台設定の・・・「本当に日本は戦争に負けたのですか?」と犬飼に尋ねてくる、端然と悠長な田舎の一年を描いたユーモア小説。これが新聞小説なのが、可笑しく頼もしい。脇役花輪兵子の活躍と秘密書類の中身が印象的♪( ´▽`)2017/02/03
まあこちゃん
35
太平洋戦争直後、社長の密命により四国へ身を隠す羽目になった主人公の犬丸順吉。気が小さく平々凡々で従順な彼が、東京にはない自然豊かな四国で、地元の名士に食客としての厚遇を受けつつ、個性的な周囲の人達と関わりながら、ドタバタ生活を繰り広げるユーモア小説。昭和の空気感満載で、いや~面白かった!自分の意志を持ちながらも、結局いつも流されてしまうダメ男ぶりの主人公が憎めなく、花輪兵子とのやり取りや、アヤメへの思いも何だか微笑ましくさえ思えたし、ラストのオチも良かった。味わい深い著者の作品を、今後も追いかけたい。2018/02/14
あきあかね
32
戦後まもない日本を、そして日本人をこれほどまでに生き生きと、ユーモラスに描いた小説があったのかと驚いた。 主人公の犬丸順吉は、平凡で気が小さく、戦時中に情報局に一時期勤めていたことから、戦後、戦犯になることをおそれ、四国は伊予に身を隠すことになる。自身を「日陰者」、「落人」と呼び、つてを頼ってとぼとぼと東京を離れた犬丸であったが、食糧難の東京と違って、伊予の村はまさに「桃源郷」と言える場所であった。 「貧しい漁夫の浦島太郎が、竜宮へいった時の感想は、たぶん私と同じものではなかったろうか。この美々し⇒ 2019/03/22