出版社内容情報
マンガ家つげ義春が写した温泉場の風景。一九六〇年代から七〇年代にかけて、日本の片すみを旅した、つげ義春の視線がいま鮮烈によみがえってくる。
内容説明
旅人・つげ義春が見た温泉の風景とは?1960年代末から70年代にかけて、日本列島の片すみにあった温泉宿を探して、青森、秋田、福島など、東北や九州を旅した、つげ義春。農村の湯治場に集う人々の表情や、絶望的に静かな雰囲気を見事に写し撮った作品は、忘れられた貴重な記録であるとともに、強烈なつげワールドである。2003年刊のカタログハウス版を大幅に再編集した。
目次
写真(青森・岩手・宮城・山形;秋田;福島;関東・甲信;九州・近畿)
エッセイ(黒湯・泥湯;上州湯平温泉;秩父の鉱泉と札所;下部・湯河原・箱根;伊豆半島周遊 ほか)
著者等紹介
つげ義春[ツゲヨシハル]
1937(昭和12)年、東京葛飾生まれ。子供のころからいくつものアルバイトを経験し、小学校卒業とともにメッキ工場に勤める。その後職を変わりながら、職業としてマンガ家をめざし、1955(昭和30)年に単行本『白面夜叉』で本格デビュー。貸本マンガや子供向け雑誌で活躍。1965(昭和40)年から「月刊漫画ガロ」に作品を発表し、じょじょに注目を集めるようになる。独特な作風で知られ、寡作ではあるが、根強いファンを持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ito
57
つげさんからは多くの影響を受けた。特に温泉紀行は私の温泉旅行の必需品であり、つげさんが行った温泉をたどるのも楽しみであった。私は鄙びて老朽化したボロい温泉宿に郷愁を覚える性質なので、本書に登場する昭和40‐50年代の古くて潰れそうな湯小屋や湯治場の風情は感慨深い。以前、紀行文で読んだ温泉の写真が沢山掲載されており、とても癒される。それ以上にうれしかったのは、文庫版出版に際しあとがきを著者本人が記しており、つげさんの生存を確認できたことだ。著者の近況を思わせる写真も見られてよかった。原画展をやって欲しい。2013/05/26
ホークス
53
「ねじ式」の漫画家つげ義春氏(お元気です)は東北などの鄙びた温泉を愛し、多くの写真を撮った。本書は昭和後期の写真にイラストとエッセイを加えたもの。掘立小屋、砂利道、裸の老若をモノクロ写真で見るうち子供時代に戻ってしまう。若者は「これどこの国?」と尋ねるだろう。浴室の隙間だらけの木の壁も、裸電球の洞窟みたいな炊事場も、まだ奇異ではなかった。アニメ「千と千尋」に当時の匂いが表現されている。著者は旅によって、生きる侘しさから逃亡を図っていた。虚無感を風景に託した様なイラストは、漫画の枠を超えた異才を示す。2020/03/01
あたびー
48
秘湯の写真とイラストとエッセイ。 昭和44年の夏油温泉の写真が数年前私が泊まったときとほとんど変わらず驚愕。 つげ義春の好きな温泉は古ぼけて貧乏たらしくて侘しくて畳の傾いているような場所だそうだ。 彼がそういう宿を営む空想を巡らす様子が好もしい☺️ もっとも、家人からは無視されているようである。今年芸術院だかのメンバーになられたようだが、どうしていらっしゃるだろうか。2022/03/10
T2y@
44
古き湯治宿は、姥捨を想像させる。だが、その侘びしさがまた癒しを感じさせるのである。(あとがきより) つげさんの画風とエッセイが、その情緒をより際立たせる。2022/05/22
gtn
37
著者自ら告白しているとおり、鄙びた温泉郷巡りというより、現実逃避に近い。その余裕のなさが著者の真骨頂ではあるが。2020/09/03