出版社内容情報
幻想怪奇譚×ミステリ×ユーモアで人気のシリーズ、新作を加えて再文庫化。猿渡と怪奇小説家の伯爵、二人の行く手には怪異が――。
内容説明
三十路を過ぎて定職につけずにいる「おれ」こと猿渡が、小説家の「伯爵」と意気投合するに至った理由は、豆腐。名物を求め津々浦々を彷徨う二人に襲いかかる奇怪な現象。蘆屋道満の末裔が統べる聚落、闇夜に出没する赤い顔の巨人、蟲食う青年、そして湖の水牛。幽明の境に立たされた伯爵の推理と猿渡の悲喜劇の果てに現出する、この世ならぬ異景。書下ろし短篇を加えた完全版。
著者等紹介
津原泰水[ツハラヤスミ]
1964年広島市生まれ。89年より津原やすみ名義で少女小説を多数発表。97年現名義にて『妖都』を発表。2012年には短篇集『11 eleven』で第2回Twitter文学賞国内部門1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ままこ
90
ラストの一文がどれも印象的。厄難体質の猿渡と伯爵という綽名を持つ怪奇小説家が遭遇した奇怪な出来事を綴った連作短編幻想ホラー。飄々とした語り口。怖さと軽妙さが絶妙な津原ワールド。裏話的なあとがきも面白かった。続編もあるので読んでみたい。2019/08/30
aquamarine
79
一編目はたった7p。大宮の豆腐を想像していたら最後の一行で思わず本を取り落としました。映像でガツンと頭に貼りつくラスト!…無職の猿渡と小説家の伯爵が様々な場所で出会う、夢か現かどこか不思議でやっぱり怖い怪異の数々。不思議の余韻の系統が全て違って素晴らしいです。表題作は純粋に、「猫背の女」はひたすら怖く「カルキノス」は自分の理解力を疑い、「ケルベロス」の最後の一行の不安定さに手が止まる。「埋葬蟲」は虫嫌いには酷な映像です。そして「水牛群」で怪異に振り回される頃には、猿渡がとても愛しい人間になっていました。2017/07/02
アイゼナハ@灯れ松明の火
55
これはアタリ!! 三十路を越えて未だ定職に就けずにいる冴えない主人公猿渡とその友人にして怪奇小説作家の伯爵が出くわす8つの怪奇幻想譚。冒頭の『反曲(かえりみ)隧道』で投げっ放しのブレーンバスターを喰らったような衝撃(こんな短い話なのに!!)を受けた勢いで、思わずイッキ読みしてしまったけれど、勿体なかったかなぁ?『一緒に帰ってきました』のラストが切ない『ケルベロス』が一等好みですが、締めの『水牛群』も捨てがたい。寝苦しい真夏の夜に相応しい読書を堪能させていただきました。面白かった〜!!2012/07/22
yumiha
46
最初の「反曲隧道」のラストが怖かった!怖くない津原作品が続いていたので油断していたが、本書は昼読書に決定。8編の連作短編は、どれも作者の蘊蓄に気色悪くておどろおどろしい味付けがされていたから、昼読書にして正解だった。女難の相の猿渡が怪異を引き寄せているんだと思う。「胸の底にしまって一度忘れて、それがいつか自分の物語として甦ってきたとき、自分の言葉で描きなおす(p300)」という伯爵の言葉は、作者の創作手法だな。よく似たことを他の作家も言っていた記憶があるが、ここが素人(私)のまるごと描写と違うところだな。2024/04/01
★YUKA★
42
猿渡と伯爵が意気投合した理由が『豆腐』というのに少し笑ってしまいました(о´∀`о) 「猫背の女」が怖すぎでした。続編もあるみたいですね、読みたいと思います!2015/12/11