出版社内容情報
一八〇〇年頃のノルマンディー、囚われた王党軍の騎士を救うべく、十二人の戦士が死地に赴く―華麗なデカダンス美学の残光に映える傑作。本邦初訳。
内容説明
1800年頃のノルマンディ、王党派の騎士デ・トゥーシュは、共和軍の手におちて塔に幽閉される。救出のため、12人の勇敢な戦士たちが死地へと赴いた。その中に、絶世の美女と謳われたエメ・ド・スパンスの婚約者がいたが、壮烈な死を遂げる。北の地での凄絶な戦闘と、年を経て今は聴覚を失った悲劇のヒロイン・エメをめぐる驚くべき秘密を、世紀末デカダンス美学の光芒を放つ華麗な文体で描く。
著者等紹介
ドールヴィイ,ジュール・バルベー[ドールヴィイ,ジュールバルベー][D’aurevilly,Jules Barbey]
1808‐1889。フランスの小説家・批評家。ノルマンディ地方の生まれ。反時代的なダンディズム、貴族主義、カトリシズムの旗印を掲げて文壇に君臨、“文学元帥”と呼ばれた。世紀末デカダンス美学を体現した重厚華麗なバロック的文体の小説、攻撃的な記事などを残した
中条省平[チュウジョウショウヘイ]
1954年生。学習院大学フランス語圏文化学科教授。東京大学大学院博士課程単位取得修了、パリ大学文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホームズ
15
実際に起きたデ・トゥーシュ奪還事件を元にした小説。全体的に読みにくくって大変でした。デ・トゥーシュの騎士は美しくはあるけどそれほど感情を移入できるようなキャラクターでもなかったし。2012/11/15
ラウリスタ~
13
これは…うーん、ほとんど読めたものじゃないな。訳者解説や、プルーストの着眼、ミシェル・セールの奇想など、ドールヴィイを取り巻く言説の面白さは認めるが、1799年のふくろう党がらみの実際の出来事に取材した小説は、現代の読者からするとあまりに読みにくく、話の筋についていけない。最後の3ページでどんでん返しするところだけは面白かった。男勝りで凄まじく醜い女戦士と、どんな美女よりも美しい若者、昔話の中心にいるのに今は耳が聞こえず刺繍を覗き込んでいるかつての美女、そういうキャラクター設定の面白さはあるのだからもっと2016/07/08
ハルト
9
実際に起こった、ふくろう党によるデ・トゥーシュ奪回事件を元にした歴史冒険小説であり、また紅潮の謎を解くミステリ。語り手と事件の中心と物語の中心。醜くき女性と美しき男性と赤き聖処女。彼彼女らの三位一体の性を廃棄転換による超越。愛を知らぬことと愛に殉じること。性への潔癖さ。物語としても読み応えありおもしろかったですが、著者の性の理想の追求的な部分も興味深かったです。読んでいる間、騎士のイメージが「ベルセルク」のグリフィスでした。2012/08/03
桜子
8
クノップフの描いた女騎士ブリトマートと未完に終わった〈孤独〉を配したカバーイラストは物語の末路を暗示する絶妙なチョイス。しかし、私は読み終わってバーン=ジョーンズのヴィーナス賛歌を思い浮かべた。真紅の衣を身にまとい物憂げに(ともすると不遜にも見える)髪を掻きあげるしぐさの美神ヴィーナス。貴い血脈への忠誠、膝まで浸かる流血淋漓。乙女の頬にさす紅潮。すべてが渾然一体となる幕引きは見事というしかない。解説で、1779年にじっさいに起こった騎士奪還事件を元に創作したことを知り、さらに感服した。2012/06/30
刳森伸一
6
ドールヴィイらしいダンディズムに彩られた歴史ロマン小説。痛快な立ち回りといい、男性顔負けに活躍する美女といい、ラストで明かされる胸を突かれるような秘密といい、とにかくエンターテイメントとして非の打ちどころがないし、文章には格調がある。うん、これは面白い。2017/05/24