内容説明
野菜は食材として私たちの前に登場するが、食卓の上のその姿は、彼らの生涯にとっては最期の舞台に過ぎない。本書に描かれた命あるころの野菜たちの素顔を知ると、せっせと種をまき、おいしくなるように努力と工夫を重ねる私たち人類の方が、彼らにまんまと利用されていることに気付かされるのである。全43種60点の精緻なペン画イラスト付き。
目次
キャベツ―赤ちゃんはどこから来るの?
レタス―キャベツには負けられない
タマネギ―涙なしには語れない
エンドウ―蝶のように咲く
ソラマメ―空を見上げて
アスパラガス―男たちよ、立ち上がれ
タケノコ―急生長の秘密
ゴボウ―泥まみれの英雄
カボチャ―能ある瓜は爪を隠す
シソ―鮮やかに蘇れ〔ほか〕
著者等紹介
稲垣栄洋[イナガキヒデヒロ]
1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院農学研究科修了。農学博士。専攻は雑草生態学。農林水産省を経て、静岡県農林技術研究所上席研究員、静岡大学客員教授
三上修[ミカミオサム]
1954年横浜市生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。自然科学全般のイラストを得意とする。2012年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
40
元本は2005年。同著者の雑草の本に続く文庫化。不思議な植物の話は、生きるヒントにもなる。ニンニクの殺菌力は、弱い毒として身体を刺激し免疫力を高めてくれる。強過ぎなければ、障害から学ぶ事は多い。ゴボウを野菜として認め、食文化にまで高めた日本人。工夫を諦めない尊さがある。タロイモはサトイモ科の総称。日本は米の前にサトイモの時代があり、日本人をネバネバ好きにした。好き嫌いとは不思議なもの。ピーマンの苦味成分は加熱で消えるけど、切ってしまうと分解されなくなる。丸ごと焼くか茹でれば良い。思わぬところに解決策はある2020/10/21
壱萬参仟縁
28
2005年初出。タマネギの英名オニオンはラテン語で真珠を意味するユニオに由来する(27頁)。キュウリの本数を数える際、昔はじっぽん。十は じふ と発音していた名残。キュウリの名前も きうり という黄瓜 だった(117頁)。ワサビの辛みはシニグリン(236頁)。ニンジンはパセリ、セロリと同類というか同族(238頁)。ホウレンソウは菠薐草で、ペルシアが起源(244頁)。野菜の葉緑素は人間のヘモグロビンと類似構造という(263頁~)。マメ科植物にはレグヘモグロビンを持つという(264頁)。ヘモグロビン共が共通。2016/06/18
to boy
27
再読。普段手にして口にしている野菜たちの不思議さや知らなかったことなどが簡潔に語られていて読み飽きない。野菜と人間のかかわりなども記載されていて面白いです。大豆を未熟なままで食べる(エダマメ)のは日本人だけ、トマトが新大陸から伝えられた当初は赤い実に毒があると信じられて鑑賞用だった、などトリビアいっぱいでした。2020/05/06
タルシル📖ヨムノスキー
23
稲垣さんといえば「イネ」や「雑草」の研究者という印象ですが、この本で取り上げているのは私たちが普段口にする野菜。その野菜を食材という視点ではなく植物という観点から見ているところがとても面白い。確かに野菜も植物だから、なんらかの形で「花」は咲くわけで、今まで野菜をそんなふうに見たことがなかったのでとても新鮮。私たちが普段何気なく口にする野菜にも生き物としてのドラマやロマンがあって胸が熱くなる。ちょっと気が早いけれど、小学生とその親御さん。毎年頭を悩ませる夏休みの自由研究や読書感想文の足がかりにしてみては。2024/04/29
みさどん
18
野菜のうんちくがたっぷり。話に起承転結があって逸話も歴史もおもしろい。確かな情報もたくさんでお得感があった。ニガウリの大害虫駆除の仕方には驚いた。根絶できた虫があることに驚くし、その方法にも。歳を取っていくと野菜を摂ることの大切さを意識していくものだ。自分は野菜を作るようになったので、この本がとりわけ楽しめた。2021/05/10
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