出版社内容情報
花は桜の最後の仕事なんですわ。花を散らして初めて芽が出て一年間の営みが始まるんです――桜守と呼ばれる男が語る、桜と庭の尽きない話。
内容説明
「桜は全部下を向いて咲くんです。ですから中へ入り込んで見て、初めて桜も喜ぶんです。横から見ては、全然あきませんものね」桜守と呼ばれる京都仁和寺出入りの植木職、十六代目佐野藤右衛門が語る、とっておきの桜のはなし。
目次
1 京都山越と植木屋・植藤(十六代目・佐野藤右衛門;代々仁和寺に仕えた百姓ですわ ほか)
2 桜のいのち(桜道楽、桜守三代;シベリア鉄道沿いに百万本の桜を ほか)
3 庭のこころ(庭をつくるということ;庭は手入れでなしに守りですわ ほか)
4 自然と昔の人の知恵(大切な自然を理解する心;なぜ神社に大銀杏があるのか ほか)
5 植木職の今日と明日(百まいて十残る仕事;四季とともにある職業 ほか)
著者等紹介
佐野藤右衛門[サノトウエモン]
1928年京都生まれ。代々「藤右衛門」を襲名する造園業・植藤の十六代目。十四代目から全国の桜の調査を始め、三代にわたる成果を『さくら大観』『京の桜』にまとめた。京都円山公園の桜、ドイツ・ロストックの桜など、内外の桜を育てている。97年にユネスコ本部から「ピカソ・メダル」を、99年には「勲五等双光旭日章」を受章
塩野米松[シオノヨネマツ]
1947年秋田生まれ。聞き書きの名手(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
瀧ながれ
31
「桜守り」と呼ばれる(ご本人はあまり好きな呼び方ではないよう)、京都の庭師の言葉を、聞き書きした一冊。しゃべり言葉をそのまま文章にうつしたので、やわらかな京言葉そのままの、ちょっと辛みも効いたお話を読むことができる。樹木がもとあったように植えて、「手入れ」でも「保護」でもなく「守る」。庭を育てるのは気の長い仕事で、正直現代にはうまくそぐわない。でも、そう遠くない未来にこの国がまた、効率やスピード以外の価値観を思い出したとき、この庭師の言葉が必要になるだろう。この本は、そのときまで残らねばならないのだ。2016/10/02
3月うさぎᕱ⑅ᕱ゛
24
桜守としても名の知られる造園業を営む16代目佐野藤右衛門さん。茅屋根の家に3世代が一緒に暮らしている。先代の習わしや語りの中で育ち、そこには200年の時間が流れている。生活の中に残された先人たちの記憶は祖先たちの苦労と自然への感謝の心、畏敬の念である。今その記憶は薄れ自然のあるべき姿は失われている。名桜、名木を残すため先代が日本中を歩き集め、円山公園の枝垂れ桜や兼六園の菊桜は先代の長年の苦労の末にいのちを継いで咲き誇っている。先人たちの記憶がどれ程貴重なものか、この本が教えてくれる。2017/04/17
Tenouji
9
小網代の森を読んでからの読了。こちらでも、自然に手を加えることの本質とは何か、を考えてしまう。教えるのではなく、観察と行為が紡いでいく、多様性を理解する姿勢。なんとか、多様性への接し方を、言葉にはできないものだろうか…2016/06/10
ダイキ
2
「ソメイヨシノというのは、まだできて百五十年以内しかたっていませんわね。東京の染井村でつくられたから、そういう名前がついているんです。わりあい活着率がよかったんで急激に増えてしもうたんやね。ソメイヨシノが主流になってしもうて、桜も本来のよさがなくなりました。どこへ行ってもソメイヨシノばかりなんですわ。どこへ行っても景色が一緒なんです。おもしろみも深みも何にもないですわ。ソメイヨシノのあるところは、百年くらいの歴史しかないんです。そやから、わしはあれほどつまらん桜はないといっておるんです」〈Ⅱ 桜のいのち〉2018/04/02
ティパリン
2
佐野さんが語る桜や木の育て方や庭の造り方は、人の育て方や仕事の仕方にも通じていて勉強になった。佐野さんはソメイヨシノをつまらないというけれど、ソメイヨシノが立ち並び桜色に染まる桜並木や公園を見るとやはりわくわくする。でも、もっと他の桜にも目を向けよう。なんだか今年はいろんな桜が楽しめそう!2013/03/20
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