出版社内容情報
文化の花開いた時代、文豪たちは怪奇な夢を見た。鈴木三重吉、中勘助、内田百?閨A寺田寅彦、そして志賀直哉。人智の裏、自然の恐怖と美を描く。
内容説明
近代日本の文豪たちを魅了した「夢と幽霊の掌篇」の系譜を時代ごとに跡づける画期的アンソロジーの第二巻。自由で華やいだ大正の御代に絢爛と開花した夢怪談の数々―鈴木三重吉、中勘助をはじめ「夢十夜」の後裔たる漱石山脈の作家たちに加えて、志賀直哉の知られざる怪談文芸作品を集大成。巻末特別企画として、寺田寅彦、内田百〓(けん)、田中貢太郎、岡本綺堂の関東大震災体験記集を収録した。
著者等紹介
東雅夫[ヒガシマサオ]
1958年神奈川県生まれ。アンソロジスト、文芸評論家。元「幻想文学」編集長、現「幽」編集長。著書に『遠野物語と怪談の時代』(日本推理作家協会賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sin
50
三重吉は正統ゴーストストーリー。勘助の作り物めいた夢のイメージの羅列に閉口する、ビジョン:夢は無意識の意識そんなものを羅列されても迷惑だ夢なら自分達にも反ってせっぱつまったものを実感することができる、所詮他人の夢。百閒『とおぼえ』が真正怪談。寅彦の「科学と化け物は人間の創作であり芸術」とするは名言。直哉は只想い出にふけるのみで私事に終始。巻末関東大震災:寅彦に当時を実感し東北にも思い至る。百閒の教え子に対する哀切に哀悼の意を覚え。貢太郎は只の野次馬不快。綺堂の述懐に創作の力を感じまた復興の香りあり良。2014/08/08
藤月はな(灯れ松明の火)
34
夏目漱石に師事して貰った文豪たちの描いたそれぞれの「夢十夜」。秀逸なのは内田百閒でしょう。寺田寅彦氏の「その怪異、科学的に解明してみましょう」も高飛車すぎず、ユーモラスでいいです。最後に収録されているのは関東大震災の状況を克明に記した文豪達の記述。田中貢太郎氏の震災後の朝鮮人への差別に対する日本人への憤りや震災の中、職務を全うして家族に会えずに亡くなった方々への哀悼の意を込めた記述と岡本綺堂氏の仮設住宅での年越しの記述が現在と重なり、胸を打ちます。2013/03/23
澤水月
17
漱石夢十夜系譜の夢記録と思うが正直、巻末の震災記録と百閒以外は読み難く難儀(怪談アンソロかこれ?)。百閒が突出し過ぎてる…ただ同じ漱石門下の寺田寅彦による実息子2人を実験台にしたも蓋もない人魂分析や夢記録は科学と文学両輪の妙味。中勘助のは盛り整えすぎ。震災記録は全く今に通じる。百閒の長春香、偲ぶ余りに闇鍋で位牌まで煮込む、今でいう災害ハイを嫌らしくなく泣かせつつ綴る手腕さすが。田中貢太郎が新聞社名刺用いて被服厰に積み重なる遺体を匂いまで描写するのも災害ハイか…伏字だらけの影に外国人ヘイトが想像され生々しい2020/07/26
HANA
12
大正時代の夢物語。この分野では百鬼園先生はまあ当然として、その他のチョイスが渋すぎる。鈴木三重吉や中勘助がこんな妙な夢を見ていたということに驚き、寺田寅彦の怪異に対する考え方は何度読んでも感心させられる。どこぞのプラズマ教授に爪の垢を飲ませてみたい。ただ志賀直哉は夢までリアルすぎて面白くない、他に入れるべき作品があったのではないか。付属の関東大震災関連については、百鬼園先生の稀代の名作「長春香」を始め寺田寅彦「震災日記」や田中貢太郎「死体の匂い」等。当時の惨禍を克明に記録している。2011/08/19
SAT(M)
7
夢をテーマに書かれた作品が多くを占めるアンソロジー。読み終わった後、「夢をそのまま書き起こして掌編とするのは作家としての怠慢か」という命題がふっと頭に浮かびました。真のシュール好きなら堂々Noと答えるべきなのでしょうが、とはいえ読み物としては創作が入っていた方が面白い気が…。ループものの先駆けであろう内田百閒「坂」と、夢で見る気持ち悪さを見事に表現した「菊」がベスト。夢はやっぱり悪夢に限ります。2017/06/02
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